宝養生資材 株式会社

ヒット商品の模倣被害対策として知的財産戦略とブランド戦略を融合し新展開

宝養生 代表写真
代表取締役
吉村 政城
事業内容 建築用養生資材の販売
企業名 宝養生資材 株式会社
創業 1975年(昭和50年)10月
所在地 川崎市宮前区菅生2‐19‐17
電話 044‐976‐0666
従業員 13名
代表 吉村 政城(ヨシムラ マサキ)
URL http://www.takara-youjyou.co.jp/index.html

人の健康を保つことや傷病を治癒するために保養することを「養生」と言う。それが建物の場合、床や壁に傷がつかないように保護するのが養生材の役割である。宝養生資材は、卸売業として建築養生材を商う一方、研究開発型メーカーとして、これまでに数々の養生材のヒット商品を自ら生み出してきた。近年では、ノロウイルスの処理剤や身体洗浄用の石鹸等、健康や衛生に着目した“人の養生”を支える製品開発にも力を入れている。

現場のニーズを拾いヒット商品を生みだす

建築や改装の工事現場、引っ越し、建物への搬入出の際には、床や壁、柱等を保護するために養生施工が行われる。これらの現場では人や資材が頻繁に行き交うため、物を落としたり、壁や柱にぶつけたりは日常茶飯事で、施工者がどれだけ気を付けても完全に防ぐことはできない。建物が傷つき破損した場合、修理や交換は施工者の負担となる為、養生施工は現場で欠かせない。
宝養生資材は、各種の養生材を取揃え、現場にスピーディに配送する建築養生材の卸売会社である。1975年の創業以来、神奈川県と東京都を中心とする工事現場に必要な養生材を届けてきた。川崎駅西口のショッピングモール「ラゾーナ」建設の際も同社が養生材を納めていたらしい。
そんな同社からは数々のヒット商品が生まれている。40年程前に開発した「マスキングシート」は、厚紙を特殊強化フィルムで挟み込み、表面をエンボス加工で仕上げた衝撃吸収型の床保護材である。最盛期には、この商品だけで年間3億円も売り上げたロングセラー商品である。「ロールマスカー」は、布粘着テープにフィルムを貼り合わせた壁保護材で、主に塗装時のマスキングに使用されている。エレベーター内部や出入口の保護には、ベニヤと発泡スチロールを積層した「ベニスチロール」が広く使用されている。
ヒット商品誕生の背景について、同社吉村社長に伺った。「これらはアイデアマンの先代社長が発明したものです。とにかく人と会うのが大好きで、現場からニーズを拾うのが得意、会社に戻るとすぐさま倉庫に籠り、テープやベニヤを使って試作を繰り返していました。」
現場のニーズに基づく発明品は、職人たちから好評を博し、口コミでたちまち広がりゼネコンに採用された。いずれも全国の施工現場で現在も使用されているものなので、誰もが一度は目にしているはずだ。

マスキングシート 写真 ベニスチロール 写真

(製品写真)マスキングシート  (製品写真)ベニスチロール

模倣品の横行と委託製造先の背信行為

全国に普及した同社の養生材だが、やがて模倣品が市場に出現し始めた。模倣被害はヒット商品の宿命とも言える。マスキングシート、ロールマスカー、ベニスチロールはいずれも同社が発明・命名した商品だが、知的財産を保護していなかったため、価格を抑えた同名の模倣品が出回り、市場を奪われ同社の売上も激減した。
「特許や商標で商品を守るという発想を持ち合わせていませんでした。」と吉村社長は振り返る。さらに、同社に追い打ちをかけたのが信用していた製造委託先の背信行為である。とある商品の梱包箱に、製造委託先が無断で自社の広告を印刷し、陰で発売していたことが後に発覚した。模倣どころの騒ぎではない。
「先代社長はこの時、全ての梱包箱から、相手方の社名印字箇所を切り取るよう社員に命じました。それくらいご立腹だったと聞いています。」
そうした経験から、知的財産を保護するということは、自社の利益と、利益を生み出す環境を守ることだと同社は学んだと言う。以降は開発製品を特許や商標で保護する方針に切り替え、これまで出願した件数は70件を超える。従業員数15人足らずの卸売業では類を見ない数である。
しかし、出願してもその中からヒット商品は中々生まれなかった。皮肉なことにヒットしなければ模倣品も現れない。「模倣の悔しさから特許の出願ばかりが優先し、いかに商品を売っていくかという意識が不足していました」と語る。

大学や大企業のブランドを活用した販売戦略

同社は現在、建物の養生に加えて、人の養生に貢献する製品開発を進めている。その一つが東京農工大学との連携から生まれた強アルカリ水「アプリテック」であり、「霊芝」で知られる和漢生薬から、ノロウイルス処理剤として全国に販売されている。そしてもう一つが、身体洗浄用石鹸「Takara Protect Soap」である。本石鹸には、東京大学と富士通が共同開発した新材料「チタンアパタイト」が使用され、特許の実施許諾も受けている。
大学や大企業の研究成果を活用する狙いについて伺うと、「消費者は商品の性能よりも、ブランドやイメージを大切にする傾向があります。大学や大企業のブランド力は商品の販促に有効に働きます。」との由。つまり、知財戦略に加えて、ブランド戦略も取り入れ、知名度の低さを大学や大企業のブランド力で補う作戦である。確かに、石鹸のパッケージには、「東京大学と富士通が共同開発したチタンアパタイトを採用」と明記されている。石鹸の本格発売はこれからだが、過去の苦い経験が知財戦略やブランド戦略として活かされていた。今後の展開が楽しみな商品である。
最後に、その石鹸について是非紹介したい。これまでに「お土産用」、「男性用」、「女性用」の3種が完成している。
お土産用の「宝養生せっけん」は、知人に配りやすい5個セットの商品で、各地のご当地シリーズパッケージを用意している。ネーミングには「宝物と言える大切な身体を養生したい」との思いが込められている。男性用の「川崎力」は、抗菌と吸着効果に優れるチタンアパタイトを増量し、男の頑固な脂汚れとニオイを除去する効果がある。現場の作業員や40歳過ぎの中高年男性にお勧めしたい。女性用の石鹸「エステルの瞳」には、ミネラル豊富な「死海の泥」が贅沢に配合されている。その働きで肌に潤いを与え、キメを整える効果があるらしい。大人の女性向けの高級石鹸である。
50歳を超える筆者は「川崎力」を愛用しているが、洗浄力や消臭力に加え、泡立ちの良さと使用後の爽快感の虜である。他の石鹸を使うと物足りないと感じるから不思議だ。

石鹸 写真

川崎市産業振興会館
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