フィレスタ販売 株式会社

アジなど青魚の寿司ネタ用フィーレ“三枚おろし”の一貫処理ラインで市場シェア70%

フィレスタ販売 代表写真
代表取締役
平口 克美
事業内容 水産物加工機械の製造・販売
企業名 フィレスタ販売 株式会社
創業 1987年(昭和62年)3月
所在地 本社:川崎市宮前区水沢3‐4‐56
倉庫:大阪府守口市八雲西町2‐10‐13
電話 044‐978‐2520
従業員 8名
代表 平口 克美(ヒラグチ カツミ)
URL http://suisankikai.com/

「アジ、イワシ、サンマ等の青魚の刺身用フィーレ“三枚おろし”を加工する際に、従来はゼイゴ取り機、頭部カット機、三枚おろし機、皮はぎ機と4 種類の機械と多くの作業者が必要でした。そこで、当社はゼイゴ取りと皮はぎを同時加工する新型皮はぎ機“スキンナー”を開発し、頭部カット機、三枚おろし機、新型皮はぎ機を連結した三枚おろしの一貫処理ラインを完成しました。毎分280 枚の高速処理による鮮度保持、そして省人化によるコスト削減を実現しました。」と平口社長は胸を張る。
主要製品は、頭部カット機「ヘッドカッター」、三枚おろし機「フィーレマシン」、皮はぎ機「スキンナー」、薄切り機「刺身スライサー」、選別機「ソーティングマシン」等の水産物加工機であり、関連する特許を300 余り保有している。

川崎市の部品加工会社10数社へ機械部品の供給を依頼

「元々、水産加工機の販売店として創業し、多くのメーカーの機械を取り扱っていました。その中の1社でフィーレマシンのメーカーだった日本フィレスタ㈱が倒産しました。お客様への部品供給やメンテナンスでご迷惑をかけるわけにはいかないので、当社が15年前に受け皿になり、日本フィレスタ㈱を製造部門にしました。」と平口社長は語る。
日本フィレスタ㈱は日本で初めてヨーロッパからフィーレマシンを輸入した会社だ。“フィレスタ”は一般的に魚体処理機の代名詞のように使われているが、当社の登録商標である。以前は横浜市都筑区にあった本社と工場を集約し、作業効率化のため川崎市の現在地に移転した。
「気仙沼にあった東北工場は東日本大震災で被災し、図面やマシニングセンタなど部品加工機械の全てが津波で流されました。当社の水産加工機械は140~150種類、魚の重さ20グラムから8キログラムまで魚の数だけ機械があります。図面を作り直すために、お客様が使っていない当社の機械を借りて分解しました。まずは売上に貢献する機械約30種類に対応しました。東北工場の従業員は、余震が続く中、家族を残して川崎市に移転できなかったこともあり、東北工場を閉鎖せざるを得なくなりました。そこで、川崎市や東京都の外注企業7社に設計を依頼し、川崎市の部品加工会社10数社へ機械部品の供給を依頼しました。機械のデモを行う本社スペースで機械を組み上げるようになりました。」と平口社長は語る。
外注企業あっての当社であり、外注企業と毎年親睦会を開催している。業界の特徴で魚は取れる時に受注案件が集中する。例えば、北海道のサケの場合は8月中旬頃からの3ヶ月間だ。機械1台当たり150~200部品で出来ており、どれか1つ不足しても完成しない。足並みを揃える必要があり、特急仕事も多い中で地元川崎市の外注企業の協力がとても重要である。

日本の刃物専業メーカーと1年以上かけて最適な刃物を共同開発

「当社の機械は、精密性と堅牢性を兼ね備え、長持ちすることが特徴です。具体的には、持ちの良い専用刃物、ブレの無い駆動伝達部の軸、強靭性または粘りのある材質など適材適所の選択です。主に機械への負荷を逃がす研究に注力してきました。魚の骨の硬さに合わせて日本の刃物専業メーカー3社と1年以上かけて最適な刃物を共同開発し、当社専用の特注品として製造を委託しています。刃物を変えただけで1年以上開発が進まなかった機械が即時に完成する場合もあります。」と語る平口社長は笑顔だ。
当社は機械の心臓部の作り込みで妥協しない。それはお客様の工場では機械を止めることが死活問題になるからだ。そこで、異音が発生してからすぐに故障しないように工夫している。異音が発生した場合には、訪問による部品交換、または予備の機械を貸し出し、当社にて修理することもある。お客様に安心を売りながらお客様の工場を止めないことが使命と考えている。
地方の漁業組合等は横のつながりが強いので、口コミが大切だ。メンテナンスなどアフターフォローでの悪い噂はすぐに広がるので気を付けている。当社の機械は中古でも1年保証がある代わりに、機械の価格は競合他社より高い。
「東日本大震災で優秀なエンジニアが転職したので、新たなスタッフの採用に苦労しています。希望する人材は、水産加工機械に興味があり、セールスエンジニアとして全国を歩ける人材です。」と平口社長の求める人材は明確だ。
水産加工機械の業界はセンスが求められる特殊な仕事のため、雇用して6ヶ月から1年程度は適格を見極める期間を要する。10人入社しても1人がものになるかどうかの仕事で、馴染めない人は続けることが厳しい業界だ。

中型魚から大型魚向け刺身用フィーレの一貫生産ラインを開発・製造する計画

経営理念は「水産加工機械を通じて、日本の食文化承継に貢献していく」だ。アジなど青魚を三枚におろす一貫処理ラインは、フジテレビの番組“ザ・ベストハウス123”の「ものすごい水産加工マシン」で堂々の1位に選ばれた。
「現在、機械のバリエーションを増やしています。まだ図面化できていない7~8割の機械の図面を製作しています。例えば、フグをさく切りする機械はありますが、フグの鮫皮を漉く機械はありません。ハモの骨切り機も必要です。あまり売れない機械でも復活できれば主要な機械とのセット販売で競争力を高めることができます。また、板前さんと同等の品質を維持しなければならず、歩留まり率の良い機械が求められます。お客様の要求も毎日使えて即時償却できる機械と年々高くなっています。機械が完成して自信をもってお客様に持って行ったら歩留まり率がお客様の要求に達していなくて持ち帰って設計し直すこともあります。全ての機械を復活させるには10年は必要と考えています。」と平口社長は機械の完全復活に邁進中だ。
国内需要は不漁続きや後継者不在で頭打ちになっている。国内大手の水産加工会社も東南アジアに生産拠点を移し、機械も国内で大きく展開できない状態だ。そこで、東南アジアでよく食べられている外国魚を処理する機械を開発する予定だ。顧客ニーズは調査済みで、海外からの問い合わせも多い。最近は、韓国やBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)からも引き合いがあり、「世界へ“メイドイン川崎”を売り込んでいきたい」と平口社長は意気込む。
サバ、サンマ、アジ、イワシなど小型魚の加工機械は完成しているので、中型魚から大型魚向け一貫生産ラインを開発・製造して、水産加工の国産化に貢献していきたいと考えている。
日本では職人が少なくなっているので、人件費を削減できる省人化機械を製造し、アジのフィーレ用の一貫処理ラインのように市場での導入が進めば日本国内で水産加工品を作ることも可能になる。それが当社の目指す最終到達点だ。

川崎市産業振興会館
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