株式会社 カトウ

若き3代目社長が進める改革が一歩一歩結実、得意の金属加工にさらなる磨きがかかる

代表取締役 加藤欣吾

事業内容 アルミ・ステンレス・鉄等の金属加工
企業名 株式会社 カトウ
創業 1955(昭和30)年
所在地 川崎市中原区上平間326
電話 044-511-5518
従業員 22名
代表 加藤欣吾(カトウ キンゴ)
URL http://www.kat0.co.jp/

株式会社カトウは、アルミやステンレス、鉄を中心とした金属加工を一貫して営み、今年で創業67年を迎える。少量多品種生産から大ロットのリピート品まで、顧客の幅広いニーズに応えて官公庁などからも高い評価と信頼を得ている。中でも得意とするのは、熱影響を受けやすく、寸法が出しにくいと言われるアルミ溶接だ。近年では、特に精密な仕上がりが求められる業界からの依頼が多いと言う。

そんな同社は6年前、加藤秀樹前社長から加藤欣吾現社長へトップ交代を行い、勝ち残りを賭けた組織の若返りと社内改革に乗り出した。積極的な設備投資や内製化を進めながら、長い歴史の中で「変えてこなかったこと」(加藤欣吾社長)に一つ一つ手を入れ、さらなる飛躍を目指そうとしている。

事業を承継。基本を見直し、足元固めからスタート 

現在の姿からは想像しにくいが、加藤社長が父親より経営のバトンを受け取った当時、会社は多くの課題を抱えていた。まずは社員の高齢化。平均年齢は60代と高く、昔気質の職人集団であった。ベテランの手による金属加工の技術に対しては顧客の評価も高かったが、業績は落ち込みを続けていた。

蓄積した技術の継承も頭の痛い問題だった。業績が悪い原因はどこにあるのか? 会社の売上を伸ばすにはどうしたらいいのか?――現状を一つ一つ見つめ直した末に導き出した答えは、事業の基本的なことから見直し、足元をもう一度固め直すということだった。モノづくりを行ううえでの土台となる「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」の徹底や、品質会議の定例化などを矢継ぎ早に打ち出した。

「『5S』にしても、今までやってこなかったわけではないんです。技術もないわけではない。ただ、時代が変わって、品質に対するお客様の要求が変わってきたんです」(加藤社長)。これに反して、社内の方が変われていなかった。

当然、こうした社内改革に対しては、ベテラン勢からの反発もあった。自身の年齢を見据え引退を表明した高齢の職人なども現れた。その代わりに、やる気のある若手を積極的に採用した結果、組織の若返りも図ることができた。

延べ10トンの“断捨離”を断行

様々な社内改革の中で、目に見える効果が最も現れたのが「5S」における整理・整頓だった。長らく社内では、「もったいない」「次回のために」「何かあったときにないと困る…」などと、材料や道具類を手元に抱えて置きたがる傾向が強く、小さな端材ひとつとっても膨大な量のストックがあった。しかもそれらの管理や整理・整頓が徹底されていなかったため、せっかく取って置いても必要な時にすぐに取り出せず、結局は困って再度購入、そんなことの繰り返しだった。加藤社長は「5S」の徹底を通じてそこにメスを入れた。

「『職人は作ってなんぼ、材料と道具がなければ仕事ができない。必要なものや欲しいと言われたものは全て買う』のが、今までのトップの方針。でも昔とは違い、今は物流も発達しています。必要な時に発注すれば(材料は)すぐ届きます。我々は加工屋。材料屋ではないので、多くの在庫を持つメリットはないんです」(加藤社長)。

在庫整理を行えばスペースが生まれ、現場での「安全確保」にもつながる。現場が綺麗になればモチベーションも高まり、来客者があっても恥ずかしくない。整理・整頓のメリットをこう説明して、手始めに身の回りの「無駄」の見直しから行った。すると驚いたことに、現場の職人数は20人弱であるにも関わらず、工場内から出てきたのは100本以上のハンマー、数百個に上るシャコ万力などであった。皆で共有できるものも多く、積もり積もったまさに「無駄」のオンパレードだった。

内製化で“一石三鳥”の効果  

続いて行った改革は、内製化の推進だった。経営状況を改めて見直すと、外注の占める割合が高かったにも拘わらず、外注先の管理が十分できていなことがわかった。高い外注費を払いながら、外注先から「難しい」と告げられれば納期遅れを渋々呑むといった、そんな状況が散見された。そこで加藤社長は、資金の外部流失を減らすと同時に高収益体質への転換を図るため、「できることは自分たちでやろう」と決断。「5S」の徹底で生み出したスペースに、マニシングセンタやNC旋盤、三次元測定機といった精密加工に欠かせない工作機械類を毎年1台ペースで導入し、内製化を着実に進めた。

これにより、当初の目的としていた外注費の削減や納期管理の徹底ができたのはもちろん、社内に精密加工の技術が蓄積し出すという副次効果も生まれ、“一石三鳥”の効果をもたらした。

技術の「見える化」と共有が最大の難関 

このように就任以来、無駄の見直しや高収益体質への転換に向けて社員とともに走ってきた加藤社長が、目下、一番難しいと考え、そして一番注力しているのが社内の技術の「見える化」とその共有だ。

一連の社内改革によって業績は改善し、若い人材も増えたものの、勝ち残るための「強い会社づくり」には、「今までの仕事のやり方を変える必要があります」(加藤社長)と力を込める。

今までは現場はベテラン集団だったので、個人の技術と経験で良い製品を生み出すことができた。ところが人が変わってくると、職人たちが「勘と経験」でやってきたことを、「いつ、誰がやっても同じものができる。逆に、この人でないとできないという仕事をなくしていく」(加藤社長)必要があると考えているためだ。背景にあるのは、金属加工業に求められる顧客ニーズの変化である。今、必要とされているのは少量多品種であれ、大ロ
ットであれ、常に「均一で安定した品質」の確保なのだという。そこで、手作業での寸法測定による図面化は、新たに3Dスキャナを導入し、より正確なデータにもとづくものにした。また、従来の「勘と経験」にもとづく作業は数値として収集し、機械や素材ごとに微妙に異なる加工条件や設定数値を誰でもわかるようにマニュアル化し機械に貼り付けるようにした。

このように「見える化」を続々と進め、さらには職人全員での品質会議や朝礼などを行うことで社内全体の情報の共有化も促進している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当社製品ブランド「L-style」

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