北村彫刻 株式会社

微細な文字・記号の刻印にも対応!顧客の要求に応え続ける工業彫刻メーカー

代表取締役 北村正治

事業内容 工業彫刻、精密刻印、金型彫刻、放電加工、樹脂用金型彫刻など
企業名 北村彫刻 株式会社
創業 1955年(昭和30年)2月
所在地 川崎市幸区古市場1-51-4
電話 044-276-6771
従業員 10名
代表 北村 正治(キタムラ マサハル)
URL http://www.kitamura-c.co.jp/

北村彫刻は工業彫刻のメーカーであり、創業から63年、長い時間を掛けて技術を磨き、加工ノウハウを蓄積してきた。それを裏付けるのが、社長の北村正治氏だ。北村氏は優れた工業彫刻の技術が評価され、川崎市から匠の技の持ち主として、「かわさきマイスター」に認定されている。

当社では、様々な部品に文字や記号を刻印するための金型を製作している。競合他社に先駆けて、刻印金型製作の機械化・合理化を進めてきた。製品を高精度に仕上げることにこだわり、直径1mm以下の円に入るような微細な文字・記号の彫刻を得意とする元気企業を紹介しよう。

手彫りから放電加工機を用いた製作へ切り替えることで、作業を効率化 

北村社長の父親は、戦前から手彫り職人として工業彫刻の仕事に携わっていた。戦後の復興期を経て、日本の高度経済成長が始まる1955年、父親はそれまで勤めていた会社を辞め、北村彫刻を創立した。当時は、東京電力の電柱に取り付けるプレートに刻印するための金型製作などの仕事を手掛けていたという。

北村正治氏は学校を卒業してすぐに当社へ入社、1958年のことだ。入社してから10年ほど、父親から手彫りの技術を学んだ。手彫りは金型にたがねを当て、たがねをハンマーで叩いて金型を削っていく。1日作業しても、1~2文字程度しか彫れないこともある、たいへん地味で時間の掛かる作業であった。

1973年、亡くなった父親の後を継ぎ、北村氏は社長に就任した。当時、多くの注文を抱えており、手彫りでの対応に限界を感じていた。そこで北村社長は、金型製作の機械化に取り組み始めた。

「製品を納品するため、大手のお客様の工場へも行きますので、そこで使用されている機械を見せてもらうなどして、工業彫刻に利用できる機械はないか、情報の収集に努めました。そんな中、目に付いたのが放電加工機です」と北村社長は当時を振り返る。

そして1974年、当社が工業彫刻の業界では初めて、金型の製作に放電加工を使い始めた。ただ、放電加工機の導入に際しては、業界初の試みということもあり、苦労も多かったという。例えば、社長自身が放電加工機のメーカーに何度も通い、当社の加工条件に合うような機械にカスタマイズしてもらった上で、機械を導入した。また、放電加工の際の電圧・電流の大きさや電極の送り速度の設定など、金型を最適に加工するための条件を把握するため、試行錯誤を繰り返した。

当社では放電加工機を使いこなすようになるにつれ、金型に文字や記号を掘り込むスピードが格段に速くなり、加工コストを大幅に下げることができた。同時に、短納期対応や寸法精度の向上を実現することができ、それが高い顧客満足につながっていった。

肉眼では見えない微細な文字や記号の刻印金型づくりが得意!

北村彫刻の強みは、長年にわたって磨き上げてきた刻印金型づくりの技術とノウハウだ。中でも、放電加工機を用いた刻印金型の製作ノウハウが中核的な強みとなる。

なお、放電加工とは、油等の液体の中で、加工する金属に電極を近づけ、電気による火花を起こし、その熱で金属を溶かして削っていく加工法のこと。金型材料のような硬い金属の加工に適している。

金型の製作に当たっては、まず、お客様から提供された図面やデータをもとに、パソコンを使って加工のためのプログラムを作成する。次に、そのプログラムによりNC彫刻機を動かし、銅製の電極に文字や記号を掘り込んでいく。さらに、このような加工を施した電極を用いて放電加工を行うことで、刻印金型を製作する。こうして完成した金型は、拡大鏡で寸法を測定するなどの検査を行った後、お客様へ納品される。

最近では、スマートフォンに代表されるような製品や部品の小型化・軽量化を背景に、微細な刻印ができる金型のニーズが増える傾向にある。例えば、電子回路の端子に刻印する文字や記号の大きさは、直径0.5mm未満のものもあるという。このような刻印の微細化に対応するため、電極に文字や記号を掘り込むNC彫刻機の刃物は針のように細いものを使用している。自社で刃物の先端を研磨し、細かく調整するといった工夫も、重要なノウハウの1つとなっている。

一方、当社には、北は北海道から南は九州まで、数百社のお客様から注文が舞い込む。注文のロットは1個から数百個まで、刻印の内容や大きさも多岐にわたる。主に、自動車や電気機器の部品メーカーが多いという。「例えば、自動車のボンネットを開けると、様々な部品に会社のロゴマーク、識別するための記号や車体番号などが刻印されていますが、その刻印に当社の製品が使用されています」と北村社長は解説する。

これからも、お客様の要求に応え続けていく!  

北村彫刻では、放電加工機6台、NC彫刻機3台を始めとして、フライス盤や旋盤等の設備を保有しており、効率よく生産できる体制を整備している。

ただし、刻印金型の材料にはSKDやSKS等の硬い工具鋼が用いられるため、放電加工を行うのに数時間から十数時間掛かってしまう。このため、6台の放電加工機を夜通しフル稼働させることもあるという。

また、3次元データの活用を推進しており、製品の曲面部分に刻印するための金型も製作している。「金型の曲面に文字や記号を彫るため、3次元データを用いないと加工できません。私の息子や娘婿に3次元CAD/CAMの活用を進めてもらっています」と北村社長は笑顔を見せる。

このほか当社では、金型用の材料の調達を自社で行っている。以前はお客様から材料を支給してもらっていたが、お客様の利便性を高めるため、自社調達に切り替えている。お客様は図面だけを用意すればよく、後は当社に任せておけば、指定の納期に納品されるという仕組みだ。

「今後さらに新しい機械の導入を進め、作業の合理化、製品の精度向上、納期対応力の強化を図っていきたいと考えています。お客様からどんな要求がきても、対応できるようにしたいですね」と社長は将来を見据える。

当社は裏方の目立たない存在ではあるが、なくてはならない存在でもある。自動車や電気機器の内部を注意深く見ると、当社が製作した金型を用いて、様々な部品にロゴマークや製番等が刻印されている。刻印は、製品の品質管理やメンテナンスに欠かせないものなのだ。

時代の流れとともに変化していくお客様のニーズに対し、これからも最新の機械設備の導入や、技術力とノウハウに磨きをかけていくことで応えていく。

川崎市産業振興会館
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