電解コンデンサレス電源でLED照明の圧倒的な長寿命化を実現
代表取締役 佐藤秋宏
事業内容 | ハードウエア開発、ソフトウエア開発、自社製品開発 |
企業名 | 株式会社 信夫設計 |
創業 | 1968年(昭和43年)4月 |
所在地 | 川崎市幸区下平間290 日光第一ビル3階 |
電話 | 044-223-6907 |
従業員 | 18名 |
代表 | 佐藤 秋宏 (サトウ アキヒロ) |
URL | (会社) http://www.shinobu.co.jp/ (LED製品用)https://led-shinobu.jp/ |
街路灯やトンネル内の照明、夜間操業する工場や物流倉庫の照明にLEDが使われるようになってきたが、家庭用に比べて耐環境性能とメンテナンス頻度を下げるための長寿命性能が求められている。
LED素子自体は6万時間で輝度70%に減少すると言われているが、電源部分には交流から直流に変換する際の電源品質を確保するために寿命の短い電解コンデンサが使用されており、LED照明装置全体の寿命における制約条件となっていた。
当社は1968年(昭和43年)に創業以来、50年以上に渡ってプリント基板設計を主業としたファブレスの企業であるが、新規事業として「超長寿命」のLED照明用電解コンデンサレス電源を独自の特許技術で開発した。
川崎市に創業して以来50年超、高い技術力でプリント基板設計から部品実装を主力として成長
社名の由来について伺うと、「のぶお設計と社名を間違えられます。」と佐藤社長は笑顔で答えられた。信夫設計は「しのぶ設計」と呼称するのだが、信夫とは福島県福島市にある信夫山から付けたということであった。父である先代社長は福島県出身であるが、若き日に上京して働こうと辿り着いたのが川崎市であり、元々は機構設計の仕事に従事していたサラリーマンであった。
現社長の秋宏氏が誕生した後に、一念発起して一人で起業した会社が当社である。創業当初は機構設計主体に業務を開始したが、電子機器用途に需要が拡大しつつあったプリント基板設計を手がけ、南武線沿線の大手電機メーカー数社を顧客としてビジネスを拡大してきた。売上高の9割を占めるというプリント基板設計であるが、当社の強みを尋ねると「どんな基板でも設計できることが最大の強み」と佐藤社長は胸を張る。電子機器がアナログからデジタルに大きく変換する時流に乗って、基板設計ノウハウを積み重ねてきた。
ファブレス企業である当社は、基板設計を本社で行い、基板製造や部品実装は協力会社に委託して、少ない物で1枚、多い物で月1万枚まで幅広く対応しているという。「受注案件や数量に応じて、その都度最適な協力会社にお願いしており、設計から実装までワンストップサービスで提供している」とファブレス企業ならではフットワークの良さを強調する。また、高品質であることや特急納期対応については「品質や納期対応は、どの企業も同じく力を入れているので特に強みというわけではない」と控えめにコメントされた。
社長就任後に取り組んだ自社製品開発。超長寿命の「電解コンデンサレスLED照明用電源」
佐藤社長は1988年に当社にエンジニアとして入社して以来、基板設計だけでなく営業も担当してきたが、先代社長が病を患ったのを契機に2010年に社長を受け継いだ。折しもリーマンショックから企業が立ち直ってきた頃であったが、「就任翌年に東日本大震災が起き、材料が入手困難になって苦労した。」と振り返る。その後「会社を引き継いだので、一旗上げたい」と取り組んだのが、自社製品開発であった。きっかけは、色々な開発を受託しているうちにLEDの仕事に出会ったことであった。
白色LEDを採用した照明装置は経済性や演色性の高さで現在は家庭用照明器具もLEDに置き換わってきたが、LED素子は6万時間で輝度70%まで低減と長寿命であることが利点である。ところが照明装置としての電源部分には、交流から直流に変換する際の電源品質を確保するために電解コンデンサが使用されており、熱環境では中の電解液が漏れてしまうという弱点がある。大容量の電解コンデンサでも4万時間を保証することができず、LED照明装置全体の寿命における制約となっていた。
当社開発陣は、電解コンデンサを使用しない方式で何とか長寿命化を図れないかと検討を重ねた結果、「マトリクス型安定回路」を発明し、特許出願も行ったのである。同じ容量条件で短寿命の電解コンデンサを長寿命のフィルムコンデンサに置き換えただけでは、大きさが何倍にもなってしまうため現実的ではなく、回路上にマトリクス状に配置してフィルムコンデンサの必要容量を減らしながら、直流品質の安定化を実現するという発明である。
この発明によって、LED照明装置としての寿命は従来品に比べて2~3倍となり、メンテナンス費用も大きく低減されることになった。また、従来の電解コンデンサでは難しかった高熱となる筐体内への実装が可能となり、部品点数削減と薄型軽量化も可能となったのである。
平成29年度川崎ものづくりブランドに採用。ビジョンは「信夫の電源で世界を明るく照らす」
超長寿命の電解コンデンサレス電源を武器に、どのようなビジネス展開を行っていくのかを伺った。「照明装置メーカーに電源を販売することも、LEDを購入して当社電源と合わせて照明装置として販売することもできる。」とのことであるが、施設を一括して請け負うサブコントラクター(総合工事業者)もターゲットとしているそうだ。水俣条約が発効して水銀灯の置き換え工事がどんどん進んでいくと考えているからだ。また、街路灯や高速道路の照明をLEDに置き換えていくのは、照明機器メーカーではなく自治体やNEXCO等、開拓先は多岐に渡る。佐藤社長は電解コンデンサレス電源の対象はLED照明だけではないと続ける。一定以上の熱環境下で使用する検査装置、スマートシティや鉄道関係にも、交換サイクルの長い当社の電解コンデンサレス電源の販路を広げたいとの意気込みを示す。
当社の電解コンデンサレス電源が評判を呼び、武蔵小杉にある小杉若葉通り会が2018年3月に街路灯に当社の電源を搭載したLED照明を導入した。また、同年6月には川崎市の平成29年度ものづくりブランドに認定された。
今後の事業拡大が非常に楽しみであるが、最後に当社の将来ビジョンを伺った。「ワンストップサービスの基板設計は会社の軸としてしっかりやっていく。バングラディッシュが太陽光パネル・LED・蓄電池に力を入れる政策をとっていると聞いたので、海外展開の候補として考えてみたい。」と、安定経営のベースとして基板設計を置きつつ、独自の特許技術で開発した自社製品の電源ビジネスで事業を拡大していきたいという夢を語った。
その意気込みを一言でお願いすると「信夫の電源で世界を明るく照らす」とのことであるが、超長寿命電源なので「永久に明るく照らす」ことは間違いない。
平成29年度「川崎ものづくりブランド」認定製品
『長寿命LED照明電解コンデンサレス電源』を使用した製品