株式会社 ヒラミヤ

建築家がイメージした空間デザインの実現を目的に「3D Architectural Lab」創設

代表取締役 平宮健美

事業内容 板金加工業、商業施設向け内装品製作施工業
企業名 株式会社 ヒラミヤ
創業 1970年(昭和45年)4月
所在地 川崎市高津区久地3-4-1
電話 044-811-5760
従業員 12名
代表 平宮 健美 氏(ヒラミヤ タケミ)
URL (会社)         http://www.hiramiya.co.jp/

(3D Architectural Lab)https://www.3darclab.com/

「当社は、従来の板金・金属加工技術を応用して商業施設向け金属装飾物の製作及び施工事業を開始しました。建築家やデザイナーがイメージした空間デザインを3D-CAD(3次元-コンピュータ支援設計)を駆使して製作及び施工を行う空間創造の一連のプロセスを“3D建築=3D Architecture”と名付け、3D建築の未来を生み出す研究を目的としたコミュニティ“3D Architectural Lab”を創設しました」と平宮社長は胸を張る。

製作及び施工の実績として、三角形のメッシュ構造を組み合わせた空間モジュール自社ブランド「BIOTRI(バイオトライ)」、デザイン系シューズブランドのショップ「iGUANEYE(イグアナアイ) Aoyama Main Store」、自動車ディーラーショールーム「Mercedes(メルセデス) Wakayama」等がある。

オーダーメイドのコーヒースタンドを大手コンビニエンスストア全店舗に納品      

「事業承継して社長になった当初はどのような仕事を受注すべきかを考えずに板金・金属加工の仕事は来たものを受注していました。当時は、大手電装メーカー向けサーバー部品の試作用プレス金型の製作を請け負っていました。毎月半月ほど中国に行って、試作金型10~20セットを製作し、当社でサーバー部品を仕上げ加工して納品していました。プレス金型を試し打ちした後に、全部分解して修正するので手間と時間がかかりました。また、大手コンビニエンスストア向けコーヒースタンド製作の仕事を受注した際には全店舗約2,000店に導入しました。特需的な仕事でしたが調子に乗ってしまった時期もありました。」と平宮社長は当時を振り返る。

銀行から勧められるままに運転資金を借りて、返済が始まると途端に資金繰りに窮した。その際、第86回かわさき起業家オーディション アイデア・シーズ市場での受賞を機会に知り合った専門家等から支援を受けた。

平宮社長の父親である先代社長は板金屋の大信製作所で工場長を経験した後、1970年に東京都昭島市で平宮製作所を創業。一時期、川崎市高津区二子にあった大和電子の板金部門となったが、1981年に平宮製作所として分離独立、1983年に㈱ヒラミヤに改組した。

平宮社長は学校を卒業後すぐに当社に入社した。その当時、平宮社長の叔父も含めて従業員が4人いたが、従業員が退職し、先代と平宮社長の二人になった。その時に平宮社長の妹が入社、親子3人で頑張った。1993年に川崎市高津区久地の現在地に移転し、その時に従業員1人、半年後に4人、徐々に従業員の数が増えていき、多い時は16人になったが、営業や工場スタッフ間でトラブルがあり、苦労した経験もあった。

「会社建て直しのために人員削減をしたり、自社製品を製作販売するために雇用した開発スタッフなど自ら辞めたりした人がいましたが、固定費が減少したことで、お金が回り始めました」と平宮社長は苦い経験を語る。

3D-CADと3D-スキャナーを導入して建築BIM事業を開始する     

建築業界では世界的にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデル)手法が標準になっているが、日本は遅れている。BIM手法とは壁や建具などの建築情報をもった部材を使って、コンピュータ上に3次元のバーチャルな建築モデルを作成する設計手法だ。

当社の強みは3D-CADと3D-スキャナーを保有しているので、BIM手法を取り入れ、最初の測定から装飾物や内部の取り付け金具まで製作施工できることだ。3D-スキャナー導入前は現場で装飾物を設置後に耐震シャッターにぶつかったケースもあった。そこで、現場の状態を3D-スキャナーで測定して図面化することで現場に適した装飾物等を製作できる。3D-スキャナーはリノベーションに強みを発揮する。

「板金・金属加工の技術は先代社長の父親から教わりました。道路交通や電力関係のプラントを操作監視する壁一面のパネルやデスクなど大物の“箱”を板金で製作していました。図面から板金をどのようにカットし、どこを曲げて溶接するかなど大物の製品を製作する技術を身に付けました。この技術は現在取り組んでいる商業空間での内装の仕事に生きています。久地に来た時に“箱”の中の金属加工部品も製作するようになり、主力設備の独トルンプ製レーザー加工機も導入しました」と平宮社長は笑顔で語る。

当社の従業員は現在12人、そのうちベトナム人は5人(技能実習生2人)。ベトナム人は市内の親交のある企業に紹介を受け、現地の日系企業で図面を製作していた若手人材を雇用した。そのベトナム人の若手社員は入社5年目の30歳、現在は現場のリーダー的存在に育っている。

今後は、3Dで提案できる企業に成長し、装飾物から建築物まで仕事の幅を広げることを計画している。そのためにも建築材料の強度解析や3D-CADが得意な人材を採用する予定だ。

建築家やデザイナーなどデザインに関わる人達と出会う場を創出する 

「社長として会社がどうあるべきか、しっかりした考えを持つことと格闘していました。そこで、社会人学校に通学して経営上の悩みについて先生や仲間からアドバイスをもらいました。また、イノベーションを生み出すためのスクールも受講し、自分の心の中にある本音を引き出すことを追及しました。最終的に自分がどの方向に行きたいかをファシリテーターとの対話で会社の方向性を深く考えるようになりました。その結果、建築BIM事業に注力することも決定できました。自分を信じて意思決定ができるようになり、その判断に腹をくくれるようになりました」と平宮社長は熱く語る。

多くの商業施設から問い合わせがあり、「相談しながらモノ作りができる」ことに優位性を見出した。経営理念は「温故知新」、先人が作ったモノに感謝しながら次の新しいモノを作ることだ。経営方針は「Passion for Manufacturing」、モノ作りに熱い人と出会いたい、モノ作りに限らず熱い人とつながることで面白いことができると平宮社長は経験的
に学んできた。

現在の経営課題は事業承継だ。人材、仕事、利益の内容を見直し、会社を良い状態で次の世代に譲渡したいと準備中である。今後の目標は建築家やデザイナーなどデザインに関わる人達と出会う場を創出することだ。また、川崎市の町工場全体のブランディングを目指している。行政や関係機関と協力して「生みの苦しみを分かち合う」ことを平宮社長は切望している。まずは高津工友会青年部での実現を目指して邁進中だ。

当社で製作した「メルセデス・ベンツ和歌山 / レストランKuche」のカウンターテーブル

 

川崎市産業振興会館
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