ポポロプラント 株式会社

熟練の技と最新デジタルツールを融合し、「魅せる」設計を追求する創業50周年老舗プラントデザイン会社


代表取締役 前川 光久
事業内容 各種プラントの配管・建築・土木・機械・耐震解析/熱応力解析・3Dモデリング・3次元レーザー計測・工事管理・技術者派遣
企業名 ポポロプラント株式会社
創業 1969年(昭和44年)3月
所在地 神奈川県川崎市中原区新丸子東2丁目908番地4
電話 044-750-7013
従業員 52名
代表 前川 光久(マエカワ ミツヒサ)
URL https://www.poporo.co.jp/

プラント設計会社であるポポロプラントは2019年3月に創業50周年を迎えた。石油化学プラントから液化天然ガス設備(LNG基地)や食品工場等へと軸足を移しつつ、豊富な経験と実績によって業界で確固たる地位を築いてきた老舗である。最近ではリバースエンジニアリングによる老朽工場やパイプラインのリニューアル事業、バーチャルリアリティー「仮想現実(VR)」を使った新たなサービスにも着手。「先端技術を取り入れつつ、100年先を見据えた経営基盤を構築していく」(前川光久社長)と、節目の年を迎え、さらなる成長曲線を描こうとしている。

国内LNG基地の約80%を設計 

ポポロプラントは現在、LNG基地、食品工場などの構造物やパイプラインの設計・製図・耐震解析などを柱に事業展開している。創業時の主要顧客であった石油化学プラントで培ってきた配管設計の技術とそのノウハウはLNG基地のパイプラインにも活かされており、極低温に耐える特殊な素材が使われる配管の設計をこなせる国内でも数少ない設計会社の一つである。

顧客からの評価は高く、国内のLNG基地の約8割を手掛け、数年先までの受注が決まっている状況だ。また、設計作業ではドラフター(製図台)が主流だった1980年代の早い時期からCAD(コンピュータ支援設計)システムを導入し、デジタル化を推進。さらに2DCADから3DCADへといち早く転換することで作業の効率化と顧客サービスを広げてきた。中でもここ数年に渡って力を入れているのがリバースエンジニアリングを使ったリニューアル事業。リバースエンジニアリングとは現物の外観をスキャナーで読み取り、その形状データを活かして3DCADデータを作成する手法である。これによって計測作業が10倍以上の速度で正確に行えるようになった。同社では最新の3Dレーザスキャナーを導入し、顧客の工場(機械設備やパイプライン等)をスキャニングして設計図面の作成や設計検討に活かしている。

特に近年は1960~70年代の高度経済成長期に建設された設備の老朽化が進み、改修・増設の需要が増加しているのも追い風だ。「古い設備では設計図面が残っていないケースが多く、工場の設備を活かしつつ工場の改修を希望されるお客さまにはリバースエンジニアリングによって設計図面を復元しつつ、さらにVRを使って仮想現実の空間で体験してもらいながら提案を出来るのが最大の強み」(前川社長)となっている。

バブル崩壊で新規顧客開拓に注力 

ポポロプラントが設立された1969年は高度経済成長の真っただ中。京浜工業地帯をはじめ全国で石油化学プラントの建設が相次ぎ、創業当初から順調に業績を伸ばしていった。

前川社長が入社したのは90年。実家は福島県いわき市小名浜で鉄工所を営んでおり、「プラント部品が転がっている」環境で育った。設計士を目指して上京し、当時のポポロプラントのライバル会社に入社。そこで3年間懸命に働き、24歳の時にポポロプラントに転職した。「当時は武者修行のつもりでしたが当社で改めてプラント設計の奥深さを知り、さらに仕事にのめり込みました」(前川社長)

しかし、やがてバブル景気が弾けると石油化学プラント関連の需要は徐々に縮小。2000年代に入ってからはメインの取引先からの発注も激減する中、新しい顧客の開拓が急務になってきた。「プラントメーカーからの発注を待っていればよかった環境が一変。新規開拓は非常に苦労し、一番つらい時期でした」と前川社長は振り返る。設計者としてプラント設計の仕事に打ち込んできたが、営業業務も兼務することになった。

「飛び込み営業や電話では担当者につないでもらうことは難しい。メールもない時代、ひたすら手紙を書くしかありません」(前川社長)時代が大きく変化し、先行きに不透明感が漂う中、着目したのが比較的に安定している食品分野と今後期待されるクリーンエネルギー分野だった。東京、神奈川を中心とした食品関連のエンジニアリング会社などを主ターゲットに手紙を書き、自社の技術力をアピールしていった。しばらくすると地道な努力が実り大手食品メーカーの エンジニアリング部門などから反応が出始めてきた。 また、クリーンエネルギーとして注目されるLNG基地の受注にも成功。2004~5年ごろから徐々に事業は好転し、10年ごろからは安定していく。新たな顧客の獲得について前川社長は「配管設計など石化プラントで培った技術力を評価いただいたことに加え、早くから導入していた3次元CADを使った提案がお客様とのコミュニケーションを深めるのに役立った」とデジタルツールの効用にも注目する。

プラント設計の素晴らしさをアピール

13年には業務拡張から本社を交通の便が良い武蔵小杉駅近傍に移転(現本社)。

新体制を機に前川社長は企業体質を強化するため請負の仕事を減らし、技術者派遣の比率を高めるなど収益性を重視した事業体制へと移行。さらに新規事業推進に向けて14年に3Dプリンターを購入したのを皮切りに16年に3Dレーザスキャナーなどを導入して3次元計測業務を開始。17年にはVRによる3Dモデル作成&レビュー業務に着手するなど最新デジタル機器を活用した事業展開へと本格的に乗り出していった。

「デジタル化の推進は当社の原動力であるプラント設計を目に見える形にして素晴らしさを理解してもらうことが目的。設計技術の育成と合わせて積極的に先端技術を取り入れていきたい」(前川社長)と設計を「魅せる」為の戦略だ。

最近ではVRに加えて現実と仮想空間を融合して3D映像を作り出す「複合現実(MR)」のシステムも完成。専用のゴーグルを装着して実際の建物内を見学し、同社が設計した3Dモデルを映し出すことで工事後の建物の様子を確認できるなどゲーム感覚で使える。デジタルネイティブな若い人たちへのアピールにもつなげたい考えだ。

また、展示会を軸にした営業にも取組み始めた。3D&バーチャルリアリティー展などに年2~3回程度 出展し、自社のVRの活用例などをアピールしている。18年は東京ビッグサイトの展示会に2回出展し、1500人以上がブースを訪れた。出展後のホームページへのアクセス数は10倍に増加するほど反響は大きく、新規契約も20件以上と予想以上の成果を上げている。「意外なお客様との出会いもあり、今後も展示会を中心とした営業を主力に展開したい」(前川社長)としている。

航空宇宙分野へ参入 

このような取組みが奏功し、LNG基地の増設などに合わせて札幌(札幌市)、袖ケ浦(千葉県袖ケ浦市)、姉ヶ崎(千葉県市原市)に事務所を開設。さらに3次元計測業務も軌道に乗り、18年9月には別会社を設立して一部業務を移管。3Dレーザスキャナーを4台に増設してフル操業に入っている。「LNG基地、食品工場、リニューアル、3次元計測業務の4本柱で業績は過去最高 レベルを確保することができました。当面の目標は従業員数と売上高を倍増すること。また、「新たな柱として航空・宇宙分野への本格参入を検討しているところです」(前川社長)100年企業を視野に設計専門のエンジニアリング会社への飛躍を目指す。

川崎市産業振興会館
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