バイオインサイト 株式会社

最新DNA分析技術「メタゲノム解析技術」で複数の生物種を高精細かつ網羅的に特定するベンチャー


代表取締役社長     伊藤俊介
事業内容 生物由来原料プロファイリングサービス事業、バイオものづくり事業
企業名 バイオインサイト 株式会社
創業 2020年(平成31年)4月
所在地 川崎市幸区新川崎7-7 NANOBIC2005
電話 044‐223‐8323
従業員 3名
代表 伊藤 俊介(イトウ シュンスケ)
URL https://bioinsight.co.jp/

「社業のメタゲノム解析技術に強みがあります。今までのDNA分析技術は1つの生物を深く分析する技術でしたが、メタゲノム解析技術は膨大な生物種を同時に分析できることが特徴です。新技術導入が遅れていた食品分野や農畜産分野にアカデミック(学術的)な技術を導入して業務効率化や生産性向上に寄与しています」と伊藤社長は穏やかに語る。

主要なサービスは、食品検査分野では遺伝子組換え大豆検査、コメ品種判別検査、DNA種判別検査、理化学検査、食物アレルゲン検査だ。また、研究開発分野では環境試料(水、土壌、昆虫生産物、動物の排泄物等)に含まれる膨大なDNAをメタゲノム解析し、生物多様性の可視化に取り組んでいる。

メタゲノム解析技術をコアに、具体的な生物多様性ソリューションを提案

「植物種DNAの独自データベースを構築しており、メタゲノム解析した結果を植物種の特定に活用できます。更にアカデミックなニーズに応えつつも、メタゲノム解析の結果を様々なお客様がどのように解釈し、活用するかを具体的に提案できることが当社の特徴です。現在、研究者や行政、一般企業向けに植物分布をメタゲノム解析で把握し、マッピング等をすることで生物多様性を可視化できるインターネットサービス“シムアースBI(仮)”を2022年中にリリースすべく鋭意開発中です。データ分析ツールを使って植物種のメタゲノム解析結果を地域や時期等で比較できます」と伊藤社長は胸を張る。

植物種判別用のデータベース構築のため、公的データベースから得られる情報を当社でクオリティチェックし独自に再整備すると同時に、様々な試料に対して最適なDNA分析を行うことができる独自ノウハウも確立した。

植物種メタゲノム解析データのサンプリング地域は現状の4都道府県から日本全国及び世界規模へと展開し、カバレッジを面的に拡大していく。更に解析対象を植物種から魚類など他の生物種に拡大させていくなど、把握できる生物種をより豊かにし、

将来的には、陸上生物全般を対象にした「生物多様性インターネットサービス」に発展させる計画だ。コンセプトは「生物多様性をネット上にリアルに再現」。来年度は植物種以外の生物を対象としたメタゲノム解析データの連結を計画し、生物多様性インターネットサービスが、当社のメタゲノム解析をより有効利用するツールになることを期待している。

また、生物多様性と関わりの深い日本の農業・畜産業は高齢化が進み経験の蓄積の問題や気候変動による収量の減少の問題を抱えている。分析サービスから得られた知見を具体的な課題解決に結びつけるため、スマート農業・畜産業に取り組む海外企業との連携を現在進めている。

メタゲノム解析技術を陸上生物へ応用したユニークな企業

「岐阜県の自然豊かな山間の町で、米農家の長男として生まれました。社会人となり上京し証券会社で企業の資金調達や金融市場の分析などを仕事としてきましたが、ふるさとの過疎が進み、祖父達が残した美しい山林や田畑が年々荒れていくことに対して何かしらアクションを起こせないかと思っていました。そうした中で、最近注目されている環境DNA分析技術を目にし、この技術を生かし地方の自然の価値を科学で分かりやすく可視化し、ビジネスとして成り立つ仕組みを設計できないかと考えました。また、環境DNA分析技術は世界が生物多様性のマネジメントに関心を高める中で、日本から世界へこの取り組みがグローバルに波及するポテンシャルがあると感じて、2020年4月に当社を創業しました」と伊藤社長は熱く語る。

個人で設立した会社が自身の力のみで事業運営できるとは思えなかった伊藤社長は、社内メンバーに近い形でサポートしてもらえるベンチャー企業向け入居施設を探した。かわさき新産業創造センターのNANOBIC(ナノビック)は販路・顧客開拓などビジネス面でのサポート支援体制が手厚く、技術面では実験室を設置できること、そして立地の良さがスモールスタートの当社に適合した。

行政関係より植物の調査を受託したことをきっかけに、2021年1月に植物種メタゲノム解析技術を確立した。2021年5月から植物種メタゲノム解析サービスを受託開始した際に、環境問題だけでなく、生物多様性と深いかかわりがあり当社技術を活用できる農畜産業にもビジネスの視点でも魅力を感じた。環境DNA分析は様々な応用が進む注目の技術であり、オオサンショウウオなど河川の希少種を把握する等水生生物を対象に利用が広がっている。当社はこれを陸上生物へ応用したユニークな企業だ。

DNA分析と生物多様性を結びつけ、市民が身近に利用できる未来へ

経営理念は「生物多様性を可視化し、ワンヘルスを実現する」、ワンヘルスとは人間と動物、生態系の健康を一体として捉える考え方だ。ビジョンは「人々はこれまでの過剰な社会のあり方を見直し、環境と良好な関係を築くシンプルな生活が必要なことに気が付いています。私たちは日々進歩する遺伝子技術で、『食』と『いのち』のインサイトを見出し、社会にインスピレーションを与えます」。

「新規サービスの開発だけでなく身近な社会生活に貢献していくため当社のDNA分析を生かした食品DNA分析も行っています。足元では食品分析や研究機関からのDNA受託分析が徐々に増えていることから、目下の課題はラボの設備拡充や社内体制の整備です。サービスの成長を見極めながら着実に基礎体力をつけていきます。生物多様性インターネットサービス事業等のDNA分析以外の複数の事業を安定的に運営する経営の仕組みも必要です。」と伊藤社長は語る。

今後も基本的に社会や顧客が求めているものに寄り添う形で生物多様性との関連分野でサービス開発に取り組む計画だ。生物多様性は社会全体での取り組みが必要な課題であるため、DNA分析技術の様々な分野への応用可能性を追求し、また、同技術以外の手法も活用する等、先入観にとらわれない事業展開を目指す。

 DNA解析のイメージ図

川崎市産業振興会館
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