美遊JAPAN 有限会社

コミュニティカフェ まんまmiyuで地元食材を使ったメニューを展開


共創担当 岩 篤志
事業内容 各種食料品の輸入・販売、飲食店業
企業名 美遊JAPAN 有限会社
創業 2004年(平成16年)4月
所在地 川崎市川崎区大川町9-2
電話 044-322-5171
従業員 6名
代表 岩 美恵子(イワ ミエコ)
URL https://miyu-japan.jimdofree.com/

美遊JAPAN有限会社が運営するコミュニティカフェ「まんまmiyu」は、川崎発祥の三角おむすびや香辛子などの川崎産野菜を中心とした食事の提供や、ケータリングサービスを展開している。「まんまmiyu」は地域に根ざした新しいコミュニティ作りに取り組むため、食のイベントやワークショップ開催、写真・絵画・雑貨などのギャラリースペースも設けている。今回、美遊JAPAN有限会社で「まんまmiyu」を運営している岩篤志氏に、これまでの展開と今後の展望を伺った。

三角おむすびと香辛子にかける思い「香辛子味噌の揚げおむすび」で川崎区長賞

川崎市産業振興会館を入って目の前の階段を上がると、コミュニティカフェ「まんまmiyu」がある。輪島塗の漆器が展示されていたり、ワーキングスペースもあったりと、普通のカフェと違う雰囲気だ。「まんまmiyu」の代表的メニューは、ふだん何気なく食べている三角おむすびである。川崎市に本社のある企業でおむすび屋が無かったのが、おむすびに力を入れたきっかけだった。「おむすびは地元の食材を入れたり、近隣店舗の商品とコラボしやすい」という。

ところで、なぜ三角おむすびなのか。岩氏によると、江戸時代に東海道川崎宿で出されたおむすびが三角だったという伝承があるとのことであった。徳川吉宗が8代将軍に就任のため、紀州から江戸に向かう途中の東海道川崎宿に立ち寄った際、川崎宿本陣の主が「白米一升を飯に炊き川崎に持参するものは二升分の値を取らす」というお触れを出したところ、白米で炊いたご飯が集まり、おにぎりにして吉宗一行に振舞った。当時おにぎりは球形が普通だったが、吉宗一行に出されたのは、三角に握ったおむすびを丸いお盆に3つ並べて「葵の御紋」を表現したものであった。それ以降、三角おむすびは、紀州藩主が参勤交代で川崎宿を通る際の定番メニューとして知られることになったという。

もう一つ、岩氏が力を入れているのが香辛子(こうがらし)を使ったメニューである。香辛子とは味の素㈱が開発した、少ない辛味とフルーティーな香りが特徴の新種のハーブペッパーである。岩氏は2020年2月に香辛子に出会い、惣菜として使うだけでなく香辛子味噌や香辛子パウダーを開発し、メニューの幅を広げた。「東海道川崎宿三角おむすびレシピコンテスト2020」に「香辛子味噌の揚げおむすび」として出品したところ、川崎区長賞を獲得できた。香辛子味噌のおむすびに加え、東海道五十三次の歴史とストーリー性を織り交ぜた、新たなおむすびにも期待が高まる。

また、岩氏は香辛子レシピコンテストを主催したり、香辛子のホームページ作りを推進したりと、川崎市内では香辛子普及のリーダー的存在になっている。2021年の第二回香辛子レシピコンテストは、よしもと芸人と川崎純情小町がMCを務めて大いに盛り上がったそうである。コミュニティ作りの一環では「縁(塩)結びプロジェクト」も展開している。江戸時代の川崎は塩の一大産地であったが、その歴史と水質改善を伝えたいため、川崎沿岸の海水を濾過して煮詰めた鹹水(かんすい)を「塩作りキット」にして塩作り体験会を実施している。この塩には5大毒素は検出されておらず、マグネシウムの量が豊富で、アスリートにお勧めなので、将来は川崎産の塩を商材化することも視野に入れている。

両極端の転職体験 転機は2018年の家族の勧め

岩氏は1984年に川崎市に生まれ、横浜市の市が尾で育った。大学は当時埼玉県の久喜にあった東京理科大学に進んだ。理科大といっても理系ではなく、経営学部で大学院まで進み、経営学修士(会計学専攻)を取得したという。卒業後は会計コンサルタントをやっている民間企業に就職したが、配属されたのは人事部門で、採用面接などを担当した。その後情報システム部門で顧客向けシステム開発のプロジェクトマネージャーの元で業務に当たり、チームで目標を達成する難しさとやりがいを学んだ。大学で学んだ会計学とは違う業務内容で休出・残業がとんでもないほど多かったものの、やりがいがあり得られるものが多かった。2年半が経った頃、大学時代の恩師から戦後、原価会計の普及に力を入れて来た財団法人を勧められる。経験してきたものを活かすいい機会と捉え、転職を決意。最初の就職先と真逆の環境だった。「定時になったら全員帰宅するのでビックリしたが、いつの間にか自分もぬるま湯に浸かってしまった」と、両極端のサラリーマン生活を振り返る。転機は2018年の秋に訪れた。母親が経営する美遊JAPAN有限会社で働くことを実兄から勧められた岩氏は、「自分が生まれた川崎で何かしたい、川崎が良くなることをしたい」と入社を決めたのである。入社後の2020年1月に、比較的駅に近く、会館内の職員だけでなく近隣の住民やサラリーマンの来客も見込める当地に、まんまmiyuを開店した。ちなみに、社名の美遊JAPANは母親の名前の一文字「美」と、遊びの中から新しい価値が生まれるという意味を込めた「遊」からとったとのことである。

川崎産野菜を流通促進・活用するため「食のプラットフォーム」構築

まんまmiyuは新しい事業に取り組み始めた。岩氏が構想する「食のプラットフォーム」の構築が、川崎市の「中小企業間連携新規事業化モデル創出事業」に採択されたのである。このモデル事業は1社では解決することが困難な課題に対して、複数社が連携して事業化および生産性向上を図るものである。岩氏が取り組んでいるのは、川崎産の野菜の流通と活用である。川崎産の野菜は、生産地である北部・中部で消費されており、大きな消費地である南部で入手することは困難である。南部の事業者は川崎産野菜に興味を示しているものの、流通の問題で敬遠しているのだ。また、中小事業者にとっては、販路開拓と小ロットでのテストマーケティングもハードルが高い。岩氏が考えたのは、巡回するやさいバスが農家から野菜を集荷して購入者の近所にある「バス停」まで運ぶ野菜流通の仕組みを活用することと、JR東日本のエキナカ事業や、おつけもの慶の自動販売機事業を活用した販売促進である。また、美遊JAPAN内に小ロット品製造に適した自販機パッケージ開発用機械設備を導入して、小ロット製造を実現することができる。本事業に取り組むことによって、岩氏の目指す「食のプラットフォーム」が構築され、より多くの方に香辛子を含む川崎産野菜と加工品の商品化や魅力発信を共有することが可能になる。今後の美遊JAPANとまんまmiyuの発展が楽しみである。

縁(塩)結びプロジェクトと川崎の塩作りキット

川崎市産業振興会館
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