―行為主体性を持った体験を― 力触覚伝達技術を活用した釣りロボットの製品開発
代表取締役 新明 脩平
事業内容 | 力触覚(リアルハプティクス)技術を活用したロボティクス事業 |
企業名 | 株式会社 Re-al |
創業 | 2018年(平成30年)2月 |
所在地 | 川崎市幸区新川崎7-7 KBIC202 |
電話 | |
従業員 | 5名 |
代表 | 新明 脩平(シンミョウ シュウヘイ) |
URL | https://re-al.co.jp/ |
力触覚伝達技術とは、慶應義塾大学ハプティクス研究センターが開発した離れた場所にある物体の硬さや柔らかさ、振動等の感触を瞬時に別の場所で感じる事が出来る高度な転送技術であり、「リアルハプティクス技術」とも呼ばれている。
Re-alは、その力触覚伝達技術を活用し、“その場”にいなくても、“その場”で行為を行っているのは自分であると感じさせる「行為主体感覚」をどのように実現すべきか、という問いに挑戦している。
その第一弾として具現化された製品が「釣りロボット」である。海や渓流で行われている「釣り」を、“その場”に存在しない釣り人が臨場感を感じながら体験できるシステムである。
力触覚(リアルハプティクス)技術を活用した製品開発を目指し会社設立
Re-alは2018年に設立された。新明氏は、慶應義塾大学ハプティクス研究センターの研究者を経て同社を創業した。
研究者として更にリアルパプティクス技術を進化させる道も考えてはいたが、もとより起業志向が強かった事、リアルハプティクス技術を「実際の製品」という形で世の中に提供したいという思いに加え、新明氏と同様に学生時代の仲間に起業志向が高かった人物である現副社長と同社を創業した。
同社の力触覚伝達技術を活用した製品開発分野は釣りを始めとするアミューズメント・エンターテイメント等の非産業分野である。非産業分野の顧客対象は主に一般市民となる。
この分野にターゲットを絞ったのは、同社が目指しているリアルパプティクスの社会実装をより身近に感じてもらおうとする為でもある。
装置の価格低減を図り、上市を2022年に予定する
現在の同社の釣りロボットの開発状況は、大分県の海上生簀や奥多摩の渓流等の実際の釣り場と遠隔地でのイベントテストや高齢者施設でのレクリエーション等での実証実験を通した製品化直前フェーズにあり、2022年中の上市を予定する。いよいよ製品発売が目前となった同社であるが、ここまでの道のりは平坦ではなかったようだ。
その一つ目が製品の低コスト化である。製品化にあたっては、品質向上はもとより、市場に受け入れられるためのデザインや低コスト化は必須である。初期モデルの釣りロボットは、大きく重く結果として部品点数が多くなり製造コストが高額になってしまっていた。それに対し、「TeleAngler(テレアングラー)」では、洗練されたデザインへ変更し、ダウンサイズ、軽量化を図るとともに部品点数や使用部品の見直しや変更を図り低コスト化を実現した。これにより利用場所を選ばすに設置が可能となる。
二つ目が、契約交渉等の会社運営である。釣りロボットの最終利用者は一般市民となるが、導入先は各施設の運営会社となる。利用期間、設置フォローはどうするか等の交渉や調整は必須となる。
三つ目が、コロナ禍によるイベントテストの延期や中止による開発遅延であった。「コロナ禍の影響に加え、これまで研究者であったので技術志向で考えていた。製品の低コスト化や企業間の契約はもとより、企業間でどのように付き合ってゆくかも初めての経験であった。これを乗り越え、まずは、釣りロボットを市場に提供してゆく。」と新明氏は語る。
釣り以外の分野でも事業展開を図り「楽しいこと」の体験を提供したい
第一弾の製品である釣りロボットの提供を通じて、遠く離れた釣り場の光景がリアルタイムでモニターに表示され、釣れた際の引きや振動等の実際の感覚が瞬時に感じ取れる事が出来るようになる。
これまで、我々人間は自分の存在する場所や肉体的・社会的状況に縛られて生活しており、これら制約から自己を解放する手段として、本を読み、映画やショーを楽しみ、バーチャル空間をも活用することで、空想の世界での活動を創作して疑似体験を楽しんできた。このシステムが完成すると、空想世界から解き放たれ、これまでのゲームの釣りとは違う海や渓流で行われている実際の「釣り」を、“その場”に存在しない釣り人が臨場感を感じながら体験できるシステムが誕生することになる。
同社が「メタバースフィッシング」と名付け、並行して開発している新型釣りシステムがある。これは更に進化し、“その場”は現実空間の釣り場である必要は無い。現実の魚の引きをデータ化し、仮想の魚へ覚えさせることで、仮想空間で24時間365日、釣りたいときに実際同様の釣りを楽しむことを可能する。
本システムは、体力の衰えや肉体的ハンディキャップのある方でも、それを克服してより気軽に臨場感を体験出来る。加えて、遠隔地の釣り場の紹介や実際に釣れた魚を食す事等を通じて地域活性化にも寄与出来るのはと考えている。
同社の事業構想は、釣り以外のアミューズメント・エンターテイメントのジャンルにも力触覚伝達技術を展開し「楽しいこと」の体験を提供する事であり、様々な事業展開アイデアを有している。それに向け、今後は、資金調達を行い製品開発の加速化を図りたい意向である。
“「行為主体性(agency)」ある快適で活力に満ちた時間をすべての人に。”をビジョンに掲げるRe-alの今後の事業展開に期待したい。
力触覚技術を活用したRe-alの釣りロボット
TeleAngler(テレアングラー)
奥多摩渓流と遠隔地を繋いで行なった実証実験の様子