有限会社 藤本精機

携帯電話部品や自動車部品用の高度なプラスチック金型を設計製作

藤本精機 代表写真
社長 藤本 幸治
事業内容 携帯電話、自動車部品等のプラスチック射出成形用金型の設計及び製造
企業名 有限会社 藤本精機
創業 1972年(昭和47年)9月
所在地 〒213-0005 川崎市高津区北見方2-10-5
電話 044-811-0151
FAX 044-811-0186
従業員 9名
代表 藤本 幸治 (フジモト コウジ)
資本金 300万円
URL http://www.fsk-jp.com/

町工場が点在する府中街道沿い、高津駅に向かって第三京浜を越えると右側に有限会社藤本精機の看板が見えてくる。当社は、主に携帯電話や自動車部品など精密プラスチックの射出成形金型を設計・製作する会社である。
工場内には、マシニングセンタ、NCフライス、NC形彫放電加工機、ワイヤーカット放電加工機などの工作機械が並んでいる。2階の事務所には、3次元CAD-CAMを6台保有している。全社員数9人のうち、5人が3次元CAD-CAMを使った精密プラスチック金型の設計ができる会社である。

3次元CAD-CAMを他社に先駆けて導入する

「約25年前に得意先メーカーが3次元CAD-CAMを導入した際に、全く同じ機種の3次元CAD-CAM 1台を導入したことが当社の成功要因です。当時、3次元CAD-CAMは2,000万円以上と高価だったため、10人以下規模の企業としては他の下請企業に先駆けて導入しました。その結果、お客様から信頼を得ることができました」と藤本 幸治社長が語る。
3次元CAD-CAMを使えば、複雑な形状の立体加工を実現できる。CAD-CAMとは、コンピューター上で対話的に製品を設計するシステムのCADとそのCADで設計され製品モデルから工作機械のNCデータなど加工プログラムを生成するシステムのCAMから成る。
「プラスチック金型の設計は、お客様との対話が重要で開発段階から当社の設計者が設計に加わります。特に、自動車部品の場合には、コスト削減や納期短縮を織り込んで設計するため、設計者はNCフライスやマシニングセンタなど工作機械による加工技術といった現場のことも熟知した人間でなくてはお客様への提案が出来ません。当社では、入社後最低でも2~3年は工作機械による金型加工技術を習得してから設計部門に異動します」と藤本社長は若手従業員の設計力と提案力に磨きをかける。

新素材プラスチックの試験研究用の金型を受注

「当社の強みは、大手樹脂メーカーの開発部門と直接取引していることです。新素材プラスチックの試験研究用の金型を受注しているので、新規材料の品質特性や用途情報をいち早く入手できます。この情報は、当社のお客様であるプラスチック射出成形加工企業にとっても重要な情報が多々あり、自社にとっても新素材プラスチックを成形するための金型の設計・製作ノウハウが蓄積できます。そのノウハウを活かしてお客様の技術的課題を解決する提案を行っています」と藤本社長は胸を張る。
自社製品は存在しないが、プラスチック材料の特性を熟知した金型の設計力と加工技術力で高い品質と競争力を維持している。
特筆すべきは、金型の材料である鉄鋼材などの熱処理と表面改質に関するデータを蓄積している企業と協力しながら金型の部品ごとに部分最適の処理方法を確立している点にある。これにより、中国など東南アジアでは実現不可能な金型の長寿命化、部分変更及びメンテナンスに対するお客様の細かい要望に対応できるため、お客様に高い付加価値を提供できる。実際に、お客様からの部分変更の要求も多く、溶接による肉盛りや切削加工などの対応も容易に行っている。

携帯電話という新たな市場に果敢に挑戦

「携帯電話部品用のプラスチック金型の設計・製作については、慣れるまでに苦労しました。要求が厳しく、顕微鏡レベルの品質を要求される。ルーペで見えるレベルのバリでも許されませんでした。しかし、高精度な携帯電話用プラスチック部品の金型を設計・製作した経験がその後の仕事に取り組む際には大きな自信になりました」と藤本社長は語る。
躊躇せずに携帯電話という新たな市場へ足を踏み入れたことにより、得たものは多かった。樹脂流入の効率的な経路(ランナー)を設計製作に反映できるようになった。また、バリの少ない効率的な設計技術・製作技術ノウハウも蓄積できた。
3年前に某大手企業が金型設計製作事業から撤退した際に、事業を承継するとともに人材の雇用も引き受けた。技術レベルの高い人材が当社に入社したことにより、お客様からその人材に逆指名がかかるなど優秀な人材に仕事もついてきた。

会社は小さくても全てにおいて超一流を目指す

「当社の求める人材像は、機械いじりの好きな人、ものづくりが好きな人です。昔は工場には年齢層の高い従業員が多かったので、若い人が入社してもポツンと孤立して、会社になかなか定着してくれませんでした」と藤本社長は当事を思い出しながら語ってくれた。
創業者の藤本正敏会長は、「若い人が後継者に就けば若い従業員が入ってくる。自分が辞める時には、自分と一緒にやってきた高齢の従業員も辞めることが事業承継を成功させるコツ」と明快に語る。言葉通り、2代目工場長には当時30代の従業員を抜擢した。現在は、藤本社長が40歳、2代目工場長は42歳、設計の責任者も39歳と若い布陣である。
藤本正敏会長は、プラスチック金型を設計・製作していた友人の会社に入社して、設計技術を身につけた。「問題が起きてもすぐに対応してくれる」と顧客企業からの評価が高く、顧客企業から独立したらどうかと勧められて起業した。創業当初から、会社は小さくても全てにおいて超一流を目指してきた。「小規模でも品質を落とさず、お客様の満足のいく一流の金型をつくる」という精神は2代目となる藤本 幸治社長にもしっかり受け継がれている。
顧客企業からは「多少コストが上がっても耐久性のある金型を積極的に採用したい」という要望もあり、厳しい状況においても当社には追い風となりそうだ。「これからは1社ではやっていけなくなると思います。生き残りをかけて同業他社とも連携していくつもりです」と藤本社長は語る。今後は、既存のお客様との関係強化を図るとともに、他の金型屋との連携も強化する計画である。

川崎市産業振興会館
トップへ戻る