リードサウンド 株式会社

指向性・省エネ・省スペース世界初フルデジタルスピーカーの実用化

リードサウンド 会長写真
会長 江夏 喜久男
事業内容 スピーカーシステムの設計・製造・販売、フルデジタルスピーカーシステムの製造・販売、音楽イベント事業
企業名 リードサウンド 株式会社
創業 2007年(平成19年)11月
所在地 〒213-0031 川崎市高津区宇奈根847-18
電話 044-844-5151
FAX 044-812-0900
従業員 4名
代表 代表取締役社長 石河 宣彦(イシコ ノブヒコ)
会長 江夏 喜久男(コウカ キクオ)
資本金 185万円
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法政大学発ベンチャー企業である(株)トライジェンスセミコンダクターとリードサウンド(株)が連携し、世界で初めてフルデジタルスピーカーシステムの実用化に成功した。フルデジタルスピーカーの開発には大手企業も含めた多くのメーカーが挑戦してきたが、音質等に技術課題を残したまま実用化には至っていない。当社の主要製品は、スピーカー用振動板、スピーカーユニット、円筒性無指向性スピーカー等であり、最近はバーチャルコンサート「シンフォキャンバス」が音楽イベントとして注目されている。

世界初のフルデジタルスピーカーシステムを産学連携で開発する

「新たなフルデジタルスピーカーシステムの原理を当社に持ち込んで来たのは法政大学です。スピーカー部分の開発に関して大手メーカーに依頼するも、関心を示す企業は無かったそうです。最後の最後に、駆け込み寺のように当社に来られたので話を聞きましたが、最初は技術的に難しいことが分かっていたので乗り気ではありませんでした。2回目に来られた時に、“ひょっとしたらできるかな”と思ったのが始まりでした」と江夏会長は当時を振り返る。
人間の聴覚は空気の振動(アナログ)を音として認識している。従来のシステムを使ってCDを再生するという仕組みを例に取ると、(1)記録されているデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換(D/A変換)し(2)アンプを使ってアナログ信号を増幅、(3)増幅されたアナログ信号をスピーカーに伝えることで空気の振動を発生させるという仕組みだ。
フルデジタルスピーカーシステムの仕組みは、(1)デジタル音声信号を独自の技術で分割し、(2)分割されたデジタル音声信号を、複数のスピーカーを使って合成する際に空気の振動を発生させる、という画期的な技術である。デジタルスピーカーの実用化に当たって課題とされていた雑音の排除についても解決した。「フルデジタルスピーカーシステムの特徴は、音に方向性を持たせる指向性や音に包まれる空間を生み出すサラウンド効果の実現が容易なことです。また、音をスポット空間に限定的に届ける“音のスポットライト”も可能です。D/A交換機やアンプも不要なことから周辺機器も小型化が可能なためチップ化し、スピーカーと一体化できればさらなる省スペースも実現できます。消費電力についても約1/5~1/10と省エネも実現できます。今後は公共機関や商業施設などスピーカーが必要な場所で、施設の設計業者などと協力して販路を開拓する予定です」と江夏会長は今後の抱負を熱く語る。
デジタル音声信号は伝達スピードが速いために、従来の振動板を使ったスピーカーでは音源の位置によって音の到達時間に差が生じてしまうことに加え、その放射方向が一定ではないためにクリアな音にならない。その問題に対して、当社は航空機に使用されているアルミハニカム材を利用した軽量で剛性があり適度な内部損失がある平面振動板を使うことで、音波が均一に平面から出る=時差がない為にクリアな歪みの無い音が出せて、音を遠くまでストレートに伝達できることが出来るスピーカーを開発することで対応した。「アルミハニカム平面振動板を製造できるのは当社だけです。他社が出来ない開発テーマに取り組み、他社が真似できない技術を活かしたことがフルデジタルスピーカーの開発を成功に導いたと実感しています」と江夏会長は当社の強みを語る。

デジタル音声信号がアルミハニカム平面振動板を復活させる

「アナログ音声信号が全盛だった35年前、ソニー(株)勤務時代にアルミハニカムを使用した平面振動板を開発しました。一度は販売されましたが、当時、主流だった紙の振動板に比べるとアルミは重く、音声の出力評価も良くなかったので自然と市場から消えていきました。この技術を復活させたのがデジタル音声信号です。大手企業がフルデジタルスピーカーシステムの開発に成功しない原因は、デジタル音声信号の処理方法に関する研究者と、デジタル音声信号を空気の振動に変えて音を再生する“スピーカー”の研究者がそれぞれの立場で開発してしまうことにあります。完成した時点ではじめて接続して一つのモノを作り上げようとするところに無理があるのです。開発の段階からお互いの意見を聞き、ノウハウを出し合い、技術を融合すべきところは融合してモノ作りをするという考え方で研究すれば画期的な製品を開発することができます」と江夏会長は開発の経緯を振り返る。
当社は、2007年11月に誕生した会社である。江夏会長はスピーカーメーカーの代表取締役として約22年間経営に携わっていたが、フルデジタルスピーカーの開発ではスピーカー技術だけでなく、電子回路にも精通していないと開発が進まないことに気付いた。そこで、電子回路技術に強い石河宣彦氏を代表取締役社長に迎えて新会社を立ち上げたのである。江夏会長は若い人たちに経営を任せて、スピーカー設計製作技術に関する助言を行う顧問として新会社に参画している。

大学等との共同研究開発により“やすらぎの音”を追求する

当社は“やすらぎの音”を追求して、大学、研究機関及び民間企業などと共同で研究開発を進めることが多い。開発したスピーカーから出る低周波振動が脳波アルファ波に与える影響についての研究実験を行った結果、脳波アルファ波の数値が8~13ヘルツという、瞑想中や精神が安定している際の数値を示しているというデータも得られ、人が“やすらぎ”を感じることが分かった。以前から低周波振動が眠気を誘うことや脳の活性化を促すと言われていたこともあり、今後は音楽も聴ける低周波振動アンプを製品化する計画もある。また、農作物に対して低周波振動とクラシック音楽を聞かせた際の影響を研究調査した結果、農作物への成長促進作用がありそうだという実験結果も得られた。今後は、それらの科学的根拠を解明する実験が進むことを期待していると江夏会長は言う。
音楽イベント事業のサウンドシステムコンサート「シンフォキャンバス」は、64個のスピーカーを使い、弦楽器、管楽器、打楽器など個々の音ごとにスピーカーを割り当て、音を組み合わせることにより、オーケストラがシンフォニーを奏でているような仮想空間を作りだす。かながわサイエンスパーク(KSP)などでコンサートを開催して過去2年、各1週間の開催で延べ2000人の来場者が訪れるなどの大盛況振りである。将来的には、オーケストラが演奏するスペースが無い場所でのバーチャルコンサート事業や音楽教育事業を展開する計画である。

川崎市産業振興会館
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