株式会社 ソノテック

無公害の超音波加工技術で無限に広がる可能性に挑み続ける

ソノテック 代表写真
社長 須藤 直彦
事業内容 超音波応用機器の研究・設計・製造販売
企業名 株式会社 ソノテック
創業 1982年(昭和57年)7月
所在地 〒213-0014 川崎市高津区新作5-4-1
電話 044-877-8311
FAX 044-877-8312
従業員 19名
代表 須藤 直彦 (スドウ ナオヒコ)
資本金 1,000万円
URL http://www.sonotec.com/

超音波とは人に聴こえない音(振動)のこと。超音波の振動エネルギーを利用した加工技術で“モノを切る” “モノを磨く”にとことんこだわるのが株式会社 ソノテック。当社は職人さんが手に持って作業できるような小型軽量の超音波研磨工具の分野で業界をリード、日本国内はもとよりヨーロッパ、アメリカ、中国、東南アジアなど、世界中の製造現場でソノテックの製品は活躍している。

自宅の2階で創業 モノづくりを支える“金型”とともに成長

須藤直彦氏は40年程前、超音波加工機のメーカーに入社し、技術者として現場のモノづくりに携わった。超音波加工とは1秒間に数万回にも達するような超音波振動を利用して、ガラスやセラミックなど硬脆材料を加工する技術である。「1970年代はフェライトに代表される磁歪(じわい)式の振動子(磁界を加えることによって外形が伸縮する性質を利用して超音波振動を発生させる)を使った、水冷で大型の超音波加工機が主流でした。こちらは現在でも銅線を成形するためのダイヤモンドダイスに穴を開けたり、半導体の製造工程で用いられる石英ガラスを加工するためなど、主に大きな工場で利用されています。1980年頃になると、水冷システムが不要な電歪式のセラミック振動子の実用化が始まり、超音波加工機の小型化が可能になりました。私は勤務していた会社に電歪式セラミック振動子を使った小型軽量で効率の良い超音波加工機の製品化を何度も提案しましたが受け入れてもらえず、独立を決意しました」と須藤社長は振り返る。
独立後は自宅の2階に作業台を置いて小型の超音波研磨機の試作に没頭し、半年かけてサンプル品が完成、1982年に㈱ソノテックを設立した。「当時はセラミック振動子を手に入れようにも、少量では大手メーカーは相手にしてくれず、スクラップ品を分解して振動子を手に入れて初回の試作品を作りました。試作品の動作に問題がないことを確認した上で、大手メーカーに現金持参で無理矢理お願いし、ようやく特注のセラミック振動子50個を製作してもらう約束を取り付けました」と須藤社長は当時の苦労を語る。
こうして完成させた超音波研磨機の最初の注文は、商社に勤める友人の紹介によってヨーロッパから舞い込み、その後はプラスチック成型用金型を製作する際の金型表面の磨き工程で使用したいという国内外のニーズを捉えた。さらに近所の金型屋に試作品を持ち込み、現場の職人の手厳しい注文に耳を傾けて製品改良を重ね、順調に売上を伸ばしていった。「金型の表面を精密に仕上げるためには、工具を均一に超音波振動させることが必要になります。当社では工具に掛かる負荷や工具の種類・寸法ごとに異なってしまう共振の大きさを自動コントロールする技術を確立し、工具の均一な振動を実現しています。また、共振によって工具が金属疲労を起こさないようにするためのノウハウの蓄積により、故障しにくい製品を作っています」と須藤社長は胸を張る。今でもヨーロッパからのリピート注文が多く、ソノテック製の超音波研磨機は“一級品の金型”を作る職人に愛用されている。

新連携支援を活用し、超音波カッターをロボットに搭載

金型の製造技術も進歩し、表面の磨き工程を必要としない金型も増えてきた。加えて当社の主要な顧客であった国内の金型業も数が減っている。新たな超音波加工技術の用途開発に迫られた結果として超音波研磨機に加え、超音波カッター、プリント基板修正用加工機、彫金加工機にも製品ラインナップを広げている。特に超音波カッターは競合他社との差別化を実現した主力製品だ。特許を取得した独自の刃物保持機構により、消耗品である刃物を交換する際に、熟練度の低い作業者でも取り替えた刃の向きを切断方向に容易に合わせることが可能なことが特徴で、工程時間の大幅短縮につながる。
超音波カッターは自動車メーカーに販路を広げたことで、大きく販売を伸ばすことができたという。「国の中小企業支援制度である新連携の認定を受け、装置メーカーのロボットに当社の超音波カッターを搭載して、自動車用のカーペットや天井材を自動で高速切断する機械を共同開発しました。切断する材料やロボットの動きに合わせた、最適な刃物の形状を把握するため、何度も試作やテストを重ねました。こうして完成した機械が国内工場で実績をあげると、次は海外工場に導入され、さらに他の自動車メーカーへと採用が広がりました」と須藤社長は説明する。
当社の超音波カッターの切断用途は、カーボン繊維、プラスチック、革、ゴム、布、及びそれらの複合材料に加え、ケーキやサンドイッチといった食品にまで拡大している。切る物や切り方によって一つ一つ形状や素材の異なる刃物が必要となるため、製作する超音波カッターは全てオーダーメイドに近いものになる。そのため当社では注文を受けると先ずは無料でテストカットを請け負い、テスト結果を踏まえて最適な製品を供給することを心掛けている。今まで試作した数百種類の刃物の中から最適なものを選択したり、場合によっては新規に開発してテストカットを繰り返し、お客様に満足いただき購入に結びつけるのは至難の技だ。そんな当社の技術力が買われて、世に未発表の新素材のカッティング依頼が持ち込まれることも多い。新素材への挑戦は苦労も多いが、その苦労は次なる製品開発に活かされている。「超音波カッターはウォータージェットなどの他の切断方法に比べ、イニシャルコストが安い上、切り粉などのゴミ、汚水、騒音、煙を排出しないクリーンな加工機です。このような超音波カッターの優れた点をお客様に知っていただき、お客様の個々のニーズに対応することで、新たな市場を開拓していきたい」と須藤社長は自信をみせる。

お客様のニーズに応える努力を怠らず、“超音波屋”に徹する

当社は若手社員が多く、社員のモチベーションも高い。例えば、超音波カッターの営業担当者は客先でニーズを聞き出してサンプルを持ち帰り、自分で実際にテスト加工を行ってから顧客へ提案するため、様々な工夫の余地が生まれ、仕事に面白さがあるという。また、若手社員に対しては将来困らないためにスキルを磨くことを奨励しており、パソコンや3次元CADの研修に積極的に参加させる方針だ。「社長が指示しなくても社員が自主的に仕事を進めてくれる。“売上を10倍にしたい”というような会話が社員同士で交わされることもあり、頼もしく思っています」と須藤社長は目を細める。
「今後もソノテックは“超音波屋”に徹します。お客様のニーズに対応する努力を怠らず、製品や技術の完成度を上げていきます。最先端分野では新素材や複合材料が次々に出てきますので、超音波加工機の応用分野は無限に存在します。“何をどう切るのか”“何秒で切るのか”といった課題に正面から向き合い、私たちは進化し続けていきたい」と須藤社長は静かに、そして力強く語る。

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