日崎工業 株式会社

看板づくりで培った金属加工技術で個性的なデザインの独自商品を開発

日崎工業 代表写真
社長 三瓶 修
事業内容 オーダーサイン、モニュメント、什器備品、建築金物の設計・製作・取付工事
オリジナルインテリアブランド、カスタムメイドサインの製造販売 等
企業名 日崎工業 株式会社
創業 1967年(昭和42年)7月
所在地 〒210-0858 川崎市川崎区大川町7-2
電話 044-366-7711
FAX 044-366-7708
従業員 20名
代表 三瓶 修 (サンペイ オサム)
資本金 2,070万円
URL http://www.hizaki.jp/

羽田空港のフライトインフォメーション、東京ミッドタウンのフロア案内、日産やソフトバンクの店舗サインなど、私たちが何気なく目にしているモノを作っているのが日崎工業 株式会社である。当社はアルミ、鉄、ステンレス、真鍮といった金属を活かした看板(サイン)作りで、業界屈指の技術と品質を持つ。「お客様に届ける商品は完璧でないとダメ」というモノづくり哲学を掲げ、たとえ一個のオーダーでも全力で取り組んで高品質に仕上げ、なおかつ短納期を実現している。“日本一高価な板金屋”と揶揄されるほど高付加価値の製品を世に送り出す、金物サイン製作ではトップレベルの企業を紹介しよう。

空港や公団の看板製作で事業基盤を固め、顧客ニーズに応え続ける

約50年前、板金職人として腕を磨いた三瓶社長の父親は、東京都北品川で照明器具のスチールフレームを製作することから事業をスタートさせた。1967年、業容の拡大にともない川崎の地に移り、日崎工業㈱を設立。高度経済成長の波にも乗りながら看板業界大手の下請けとして空港や公団住宅の設置看板などを製作し、事業基盤を固めた。「公団住宅の仕事では、毎日20台~30台の看板を製作するため、夜も寝ずに作業していたと父親から聞いています。また、看板づくりは展開図とよばれる特別な図面を作ることから始めるのですが、当時の職人はデザイン画を見ただけで板金の展開形状や寸法を頭の中で計算して加工するという熟練の技により、現在でも完成までに2~3日かかる看板を1日で作っていたようです」と三瓶社長は幼少時から見てきた父親の仕事ぶりを振り返る。
三瓶氏は学校を卒業後、3年間は他社で生産管理などを学んだのち1981年に当社へ入社。工場の現場作業、資材購買、営業、設計など、当社の主な業務を担当した。「バブル崩壊によって売上が急減した際には、お客様のもとへ何度も足を運び、当社へお客様を呼び戻すことに努めました。一方で他社に先駆けてCADを導入して設計部門の充実を図り、お客様への提案力の強化を進めました。これらの施策が功を奏して、大手ガソリンスタンドのセルフスタンド化の際には看板の製作を一手に引き受け、業績を持ち直すことができました」と三瓶社長は笑顔をみせる。
当社の事業は企業・店舗向け看板に加え、企業のロゴサイン、モニュメント、展示会のブース、イベントの演出、商業施設の案内板などに広がっており、顧客の様々なニーズに対応している。例えば、2009年 東京モーターショーの展示ブースの製作を受注した際には、ローコスト化に加えて再利用したいという顧客ニーズに応えるため、板金を溶接して製作するという従来の使い捨て仕様から、アルミ押出材で製作することで簡易に分解、再組立て可能な仕様に切り替えて対応し、たいへん喜ばれたという。また、渋谷パルコのクリスマスツリーの製作では映像作家とのコラボレーションにより、色彩を自在に変化させることができるツリーを製作、演出して街行く人々の目を楽しませた。

技術とデザインを融合させ、高品質な独自商品を企画開発

2008年6月、当社は『メタルセンス』というオリジナルブランドを立ち上げ、インテリアの展示会に出展して大きな反響を得た。メタルセンスは、天皇杯全日本サッカーの優勝トロフィーを製作した造形作家・空間デザイナーである鈴木 尚和氏と共同で開発し、デザイナーの感性と当社の金属加工技術を融合させた、テーブル・椅子・収納棚・小物などのインテリア商品だ。「メタルセンスは、日崎工業が看板づくりで培ってきた溶接と研磨技術の集大成です。ステンレスの板をひずみが出ないよう溶接するコツ、接合部分が目立たないよう金属の表面を鏡面研磨する技といった、製品を美しく仕上げる技術により、月や波をモチーフにした柔らかなデザインを際立たせています」と三瓶社長は解説する。現在、メタルセンスの商品は東京ミッドタウンのガレリア3階にある『THE COVER NIPPON』で展示販売されている。椅子1脚が約75万円という高級家具であるが、是非ともその曲線美と輝きを目にし、手で触れて頂きたい逸品である。金属特有の質感と存在感を活かしたインテリア家具として、本場であるヨーロッパの展示会に出品することも検討しているという。
一方、2009年6月には、インターネット上の通販専用サイト『R―DERO(アールディーロ)』を立上げて独自デザインの店舗用スタンド看板の販売を始めた。飲食店、ペットショップ、美容院などの幅広い顧客に向けて、曲線や円を多く使った個性的なデザインのスタンド看板を提供する。「注文を受けてから製作、納品まで、2週間で対応できる体制を整えました。お客様はR―DEROのサイトにアクセスし、各種取り揃えたサイズ・材質・カラー・デザイン等を好きなように組み合わせることで、お店のイメージに合ったオリジナルスタンド看板を廉価で作成することができます。お店をリニューアルして競合店と差別化したいというお客様のニーズに対応しました」と三瓶社長は説明する。

情熱を持った社員と共に新商品・新技術開発への挑戦を続ける

当社が将来にわたって発展していくための課題は、一部の特定の顧客に売上の多くを依存している現在の事業構造を、もっと幅広い顧客から注文をもらう構造に転換していくことだ。「受身から脱却して、攻めの姿勢に転じることが大切だと考えています。昨年2月に新規開発事業部を新設し、毎週1回のスタッフミーティングで、自社ブランド商品をどうやって次の事業の柱に育てていくかを議論しています」と三瓶社長は語る。前述のR―DEROは、ここから生まれた商品企画だ。今後は、木やプラスチックなどの異種素材の用途開発や、異業種の技術を持った企業との連携により、既存事業の枠を超えた商品開発も視野に入れている。
当社にはモノづくりが好きな社員が集まっている。30代の若手社員が多く、自分たちで創意工夫していこうという意識が強い。設計部門の技術者と工場の職人の良い意味での緊張感を持った関係は、お互いの仕事の質を高めることに役立っているという。「日崎工業という社名こそ表には出ませんが、当社で作った製品は、空港、商業施設、公園、イベント会場など、いたる所で目にすることができます。モノづくりが好きな人にはこんな面白い仕事は他にないと思いますので、情熱を持った若い人には是非当社へ入社いただき、一緒に仕事をしたいと考えています」と三瓶社長は言葉に力を込める。

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