食品自動串刺し機「らくさし君」シリーズシンプルな卓上タイプで生産効率向上
社長 桝田 基弘
事業内容 | カークーラー温度調節部品、金型、オートアクセサリー、自動串刺し機 |
企業名 | ヒロキ産業 株式会社 |
創業 | 1968年(昭和43年)6月 |
所在地 | 〒211-0051 神奈川県川崎市中原区宮内1-23-10 |
電話 | 044-788-1321 |
代表 | 桝田 基弘 (マスダ モトヒロ) |
URL | http://hiroki-ic.net |
「食品自動串刺し機『らくさし君』シリーズの認知度向上を目的に“川崎ものづくりブランド”へ応募しました。認定後、すぐに全国紙や地元紙に記事として取り上げられたので問い合わせが増えています。川崎市内での認知度を高め、地元の飲食店や惣菜工場の生産効率向上のお役に立ちたいと考えています」と桝田社長は語る。自動車部品や空調機器部品などの金属プレス金型の設計製作からプレス加工まで一貫生産できることに加え、焼き鳥など肉類、ジャガイモなど野菜や青果類、イカやウナギなど魚介類まで楽に串刺しできる自動串刺し機「らくさし君」を製造販売している。
自動串刺し機「らくさし君」開発のきっかけは飲食店で修業中の友人
「自動串刺し機の開発は、友人が飲食店で修業中、会うたびに仕込みが大変だといつも愚痴をこぼすので、串刺しの自動機は世の中で売っていないのかと疑問に思って調べたことがきっかけです。小規模な飲食店の従業員が満足するような機械は無かったので、機械製作が強い企業を仲間に紹介してもらって、皆でお金をかけないで自作するところから始めました」と語る桝田社長は自社ブランドで出来るモノが何かないかアンテナを張って情報を集めていた。
最初は設計のたたき台を仲間が作り、当社は部品の一部を製造していたが、現在は設計から組立まで桝田社長が自社で行っている。自動串刺し機の設計製作には、今まで培ってきたプレス金型の設計製作技術とプレス加工のノウハウが生かされている。機器の電気部分以外の部品は全て自社で加工組立できる。大学に通いながら工場で仕事を手伝っていた桝田社長は仕事量が増えるのを目の当たりにして、卒業後すぐに入社したほうがいいと判断した。金型設計の技術は入社後に父親の桝田治夫現会長と当時の社員から習って身に付けた。
桝田会長は昭和40年、大田区にてマスダ精工を創業、工場が手狭になった昭和53年に現在のヒロキ産業を設立後、川崎市に生産工場を移転した。設計から加工、仕上げを一人でやり、品質とコストで客先に応えてきた金型職人で、現在も元気で会社に来て現場を見守っている。
「先代は小さな工場からコツコツと努力して工場を大きくしました。誰にも製作できない金型や製品を何とか工夫して製作するという典型的な職人気質の先代は、人的な信頼関係に技術で応えて仕事を集めてきました。仕事を通じて育てていただいたお客様が高齢化で引退して、若手の担当者に代わると仕事の内容や要望が大きく変化しました。そこで、平成12年、西暦2000年という節目の年でもあり、専務だった自分に経営判断を任せたいと経営を引き継ぎました」と語る桝田社長は現会長に敬意を表す。平成14年には、金型の設計製作からプレス加工まで事業を拡大するため、川崎市の現在の本社工場に移転した。
自動車業界を含めて金属加工の分野ではお客様が海外に移転したが、当社は桝田会長の方針で海外には行かなかった。
専業の中小企業を集めた“共同受注グループ”のコア企業として奔走する
自動串刺し機『らくさし君』シリーズは、焼鳥店、飲食チェーン店など日々忙しい飲食店に販売する計画である。当社の強みは、お客様の加工する食品や作業に合わせて製品をカスタマイズできる点である。焼き鳥などの肉類だけでなくジャガイモなどの野菜や青果類、イカやウナギなど魚介類にも対応でき、個人の焼き鳥店から惣菜工場まで幅広く対応できるシンプルに“串を刺す”という機能に特化した自動串刺し機だ。一流の厨房機器メーカーや商社からは見た目のデザインを気にする声もあるが、当社はシンプルでパート作業者でも使える機器を目指して製作している。以前は大型機器も受注したが、2~3年前にシンプル機能の卓上タイプに特化する方向に転換、顧客ニーズを把握しながら“選択と集中”に踏み切ることにした。
自社ブランドの自動串刺し機『らくさし君』シリーズを開発するまでに桝田社長は様々な取り組みに挑戦してきた。大手企業が当社の金型設計製作技術を高く評価していた時期は売上を確保できたが、金型の内製化が始まると職人技で積み上げてきた技術やノウハウを大手企業に吸い上げられた。
既存の仕事もいつどうなるか分からないと桝田社長は危機感を感じる中、それでも既存の仕事が忙しく仕事に追われていた時に、先輩経営者の誘いで異業種交流会に参加した。普段会えない異業種の経営者や年上の経営者に、同業者には言えないことを相談できることや一緒に経営の勉強ができる仲間ができたことが良かったという。
金型の設計製作、プレス加工の仕事は大手企業からの価格協力の要求も厳しくなり、利益を出す余裕は無くなった。自社で全ての加工を展開しようとすると会社を大きくせざるを得ない。しかし、専業の小さな会社が集まれば大手企業並みの仕事を獲得できると桝田社長は考えて“共同受注グループ”を立ち上げた。
当社で受注して協力企業を外注先として活用する仕組みだが、桝田社長は受注獲得業務と外注活用業務に忙殺され、結局グループを解散した。桝田社長は次に代理店商売に興味を持つ。
アウトレット建材の住宅リフォーム事業「もったいない市場」を立ち上げる
「代理店としていろいろなモノを取り扱える立場になろうと、1人で飛び回っていた時期がありました。真の目的は自社ブランドのニーズを収集することでしたが、異業種の経営者が取り組む全く違った分野のビジネスモデルに関与しました」と桝田社長は当時を振り返る。
当社の住宅リフォーム事業『もったいない市場』は、住宅展示場やショールームの中古キッチンなどアウトレット建材を使って、リフォームを安価に提供するビジネスモデルだ。加盟店がリフォームなどの本業と『もったいない市場』とのダブルネーム効果でブランド力の向上を図ることを狙う。
昨年11月には、本社工場前に自動串刺し機のショールームも完成した。焼き鳥業界では、中国の食材不安もあり、安価で低品質な食材を求める消費者だけでなく、国内産の鶏で国内加工工場での生産を求める声がある。飲食店でも鮮度の良い食材で、おいしい料理を出す店にはお客が集まるので自動串刺し機の需要はあると言う。串刺し作業が楽になり人件費が削減できる自動串刺し機の販売実績を増やしながら、お客様が実際に使っている様子をホームページ上の動画で紹介、更なる普及を狙う予定だ。
また、地元の祭りや商店街のイベントで自動串刺し機のデモ参加、また、過疎地対策として自動串刺し機『らくさし君』シリーズを使った食品加工の仕事を地方で創出する計画など「地域活性化にも協力していきたい」と話す。