高性能フィルターに使われるろ過材料のプリーツ折り機や試験機の開発製造会社
社長 阿部 和夫
事業内容 | フィルター製造機及び試験機、繊維加工機、縫製用プリーツマシンの製造販売 |
企業名 | ホップテック 株式会社 |
創業 | 1994年(平成6年)7月 |
所在地 | 川崎市中原区下小田中6-9-30 |
電話 | 044-798-8371 |
代表 | 阿部 和夫(アベ カズオ) |
URL | http://www.hoptech.co.jp/ |
「当社は、スズキジムニーの基礎となった軽四輪駆動車“ホープスター”を開発したホープ自動車(現・ホープ)の精密機械部門を分離して設立したホープ精機が前身です。ホープ精機がフィルター事業から撤退した際に、取締役3人でホップテックを設立しました」と阿部社長は語る。 自動車、工作機械、空調機、薬品、食品、水処理、集塵機、ブラインド用などのフィルター製造機および試験機を開発製造する企業である。産業用フィルターに使われるろ紙、不織布、金網、ガラス繊維などのろ材をジャバラのようにプリーツ折りする機械を製造できる企業は日本に2社のみだ。
電気自動車になってもフィルターは世の中から無くならない
「フィルターは世の中から無くならない。自動車にはエンジンの燃料フィルター、オイルフィルター、エアフィルター、そして、キャビンフィルターと少なくとも4種類のフィルターが使われている。エンジンの要らない電気自動車になっても幾つかのフィルターは必要となる。フィルターは自動車以外にもワイヤーカット放電加工機などの工作機械、化粧品、薬品、水処理などフィルターを使う企業は多い」と阿部社長は前向きだ。日本のフィルターメーカーの国内工場に加えて、タイやマレーシアなどアジアの海外工場に輸出する機会が多い。 当社の強みはろ紙などのろ材を多層折りする往復式のレシプロ折り技術だ。レシプロとは上歯と下歯が往復して、交互にろ材の上下にプリーツ(ひだ)折りする仕組みだ。従来のプリーツ折り機は回転式のロータリー折りで、ロール上に折り用の歯が付いている専用ロール式のため、一定の幅の折りしかできないだけでなく、60~80キロの重量ロールを製品ごとに取り替えなければならない。当社はレシプロ式が主流のため専用ロールを交換することなくプリーツ
折りの幅を調整できる。また、アフターサービスが良いことも強みだ。修理や改修の依頼があっても30~40年前の図面がすぐに出てくる。
阿部社長は学校を卒業してフィルターメーカーの土屋製作所(現・マーレフィルターシステムズ)に生産技術者として入社した。6年後の昭和43年に、資金繰りが悪化した際にホープ自動車の創業者である小野定良氏が資本を出資してホープ精機を設立、阿部社長は取締役として経営に参画する。故・小野定良氏は阿部社長の仲人でもある。全盛時代には阿部社長がお客様の要望を聞いて考案したコンデンサー用テーピングマシンなどの機械は売れたと言う。
バブル崩壊後に売上が下降線を辿り、阿部社長は責任をとって会社を辞職する。お客様やホープ精機で取締役だった他の2人にも説得され、平成6年に発起人3人で、川崎市宮前区馬絹にてホップテックを設立、平成10年12月に現在地に移転した。発起人3人のうち1人は現在69歳、阿部社長と一緒に働いている。当社の平均年齢は60歳と高く、若返りを図りたいと阿部社長は話す。
0.1mm単位でプリーツ折りの高さを調整、毎分120山を実現する
「当社のお客様である国内フィルターメーカーは、韓国や中国の低価格フィルターの売り込みの影響を受けて単価を下げている。但し、中国製品は安価だがエンジンの焼付事故が起きる可能性があり、賠償額も高額になるので新車には使えない。単価下落の原因は、円高で、為替が対米ドルで90~100円程度で推移してくれると国内製造業も生き残れる。政府に対応して欲しい。日本は貿易立国のため、自動車、家電、工作機械等が元気になれば景気の回復につながる」と阿部社長は強調する。 当社は、ろ材をプリーツ折りする各種レシプロ折機を中心に、ろ材を送るリールスタンド、ろ材を切断するスリッター、ろ材を乾燥する乾燥炉、ろ材に含浸した樹脂を硬化させるC化炉など顧客の要望に合った生産ラインを組むことができる。また、フィルターカートリッジが何時間で目詰まりするかJIS規格の基準で試験評価する各種テストスタンドも製造販売している。主力製品は、両面交互型ストライピングマシン「W1000」だ。フィルターろ材の筋付け装置で、ろ材の上下に交互に筋を付けることができる。ろ材の最大幅は1,000mm、筋付けピッチと言われる折りの高さを8mmから100mmの間で0.1mmの単位で変更できる。紙、不織布、ガラス繊維などろ材の種類に合わせて自由に筋の強弱も付けることができる。速度は、毎分240回、筋を付けるのでプリーツでは120山となる。筋付けピッチやマシン速度などはタッチパネルで設定できる。このプリーツ折りやピッチ調整が独自技術だ。当社では以前は実用新案も出したが、すぐに韓国や中国の企業にマネされるので最近は知的財産権の出願登録は控えている。また、多層フィルターを貼り合わせるためのホットメルトなど接着剤を塗布する機械も独自技術だ。当社の装置でも幅800mmのシートを10枚多層合わせするのは技術的に難しい。一方、1枚だけでも厚さ1cmの活性炭フィルターなどもプリーツ折りできる。
「納期を守る」「電源を入れればすぐに動く」でお客様の信頼を獲得する
「当社は納期を守ることでお客様からの信頼を獲得している。電源を入れればすぐに動く機械の設計製造を心掛けている。当社に依頼のくる装置開発は技術的に困難な挑戦しがいのある案件が多く、お客様が背中を押してくれないと開発できない。楽して機械は作れないが、メーカーとして自社製品を作っているので面白い。その苦労は次の開発に必ず生きてくる。下請けでないことが重要だ」と阿部社長は語る。 自動車キャビンフィルター用の不織布の厚さは0.2mmと繊維の取り扱いが難しい。また、ろ紙は蛇行するのでプリーツ折りが難しい。プリーツ折機は、最初に筋を付けて折るが、筋を付けるのはろ材が滑るのを防止するためだ。年々、変化するフィルターの形状やろ材の材質に合わせてプリーツ折機も対応しなければならない。お客様はリピーターも多いが、初めてのお客様もいる。当社のプリーツ折機は産業用のフィルターだけでなく窓用のブラインドや扇子など身近な製品にも使われている。イベント用で広告を印刷できる使い捨ての扇子専用のプリーツ折機を開発した実績もあり、扇状の材料をプリーツ折りするなど通常のろ材とは異なるので創意工夫が必要であったと言う。フィルターに油を浸透させた油含浸フィルターの余分な油を分離するための分離機もお客様の要望に応えて開発した。当社の自慢は仕入先への条件変更や外注先への支払を延期したことがないことだ。当社では製造販売する機械の部品の仕入代や必要経費を従業員にガラス張りにして社内の一体感を醸成している。「お客様の要望がある限り前進あるのみ」と阿部社長は元気だ。