精密電線の高度な製造技術でお客様の多様なニーズに応える
社長 藤原 一宏
事業内容 | 精密電線の設計・製造、ケーブルハーネスの設計・製造 |
企業名 | 伸光精線工業 株式会社 |
創業 | 1959年(昭和34年)4月 |
所在地 | 〒211-0051 川崎市中原区宮内1‐6‐20 |
電話 | 044‐777‐7000 |
代表 | 藤原 一宏(フジワラ カズヒロ) |
URL | http://www.shinko-seisen.co.jp/ |
伸光精線工業はストアオートメーション、FA(ファクトリーオートメーション)、医療機器等の分野向けに、精密電線とケーブルハーネスの設計・製造を行っている。『困ったお客様が訪ねてくる』という当社では、お客様のケーブルに対する多様なニーズに応え、高品質で耐久性のあるケーブルをきめ細かくカスタマイズして提供している。『頼めば全部やってくれる』とお客様から絶大な信頼を寄せられている元気企業を紹介しよう。
『切れないバーコードリーダー用ケーブル』など、時代のニーズに応えて成長
伸光精線工業は電電公社の関連会社で技術者として働いていた藤原一宏氏の父親が、1959年に創業した。導体撚り加工や電線機械の研究開発から事業をスタートさせ、2年後には合成樹脂電線を製造して大手メーカーに納入するようになり、事業を拡大させていった。
藤原一宏氏は工業系の大学を卒業後、数年間の商社勤務を経て、1982年に伸光精線工業へ入社した。入社後は製造機械の修理や製品の配達など、あらゆる業務を担当したという。「当時は、カラーテレビ、ビデオレコーダー(VHS)、エアコン等の家電製品向けのケーブルが飛ぶように売れていましたが、大手電線メーカーの下請としての立場に危うさを感じていました。そこで商社勤めの経験を活かして、新たな顧客からカスタムメイドのケーブルやハーネスを受注することで、自前の販路を広げていきました」と振り返る。
時代の流れにも乗り、当社のケーブルはワープロやノートパソコンのフラットディスプレイ、画像を処理するCCDカメラ、工場設備のタッチパネル型コントローラー、バーコードリーダーなど、様々な製品に採用されていった。その中でもコンビニで使用されるバーコードリーダー用のケーブルは、『300万回曲げても切れない』という耐久性能が顧客から高く評価され、大ヒット商品に成長した。加えて、FA向けの各種ケーブルは『工場内を走り回るフォークリフトに轢かれても大丈夫』という強度を誇り、今では主力事業に育っている。
1998年、藤原氏は父親の後を継ぎ、社長に就任した。藤原社長はマイクロケーブルの技術開発、高品質なケーブルやハーネスを安定的に供給するための設備投資などを積極的に進めていった。一方では、財務、品質管理、営業等の各部門に外部から経験豊富なベテラン人材を採用し、会社組織の強化にも取り組み、事業基盤を強固なものにした。
設備や治具を内製化することで蓄えた製造技術が、当社の強み!
当社の工場には、マイクロケーブルなどを製造するための独自の設備が整然と並び、整理整頓が行き届いた環境下で静かに稼動している。QC活動も活発に行われており、毎月社員からたくさんの改善提案が出され、それらの提案書は通路の壁に掲示されている。工場を見れば精密かつ高品質なものづくりが行われていることは一目瞭然だ。
当社では、製造機械や治具・金型などを内製化することで、独自性の高い製造技術を蓄積している。また、顧客のニーズに迅速かつ的確に対応するため、ケーブルからハーネスまで一貫生産するための生産設備や組織体制を整備している。
例えば、医療機器や情報機器に使用されるマイクロケーブルの製造では、数十μmの極細銅線を複数本撚り合せて1本の導体(ワイヤー)を作る。その導体に絶縁材料である樹脂を被覆すると、髪の毛の半分程度の細い絶縁電線ができる。その絶縁電線に静電気や電磁波の干渉を防ぐためのシールドを被せると、髪の毛とほぼ同程度の太さの同軸ケーブルができる。そして、たくさんの同軸ケーブルを束ねて編組シールド加工を施し、ジャケット(外部被覆)を生成してマイクロケーブルができあがる。さらに、ケーブルの端末には、波長の異なる2種類のレーザーを使用して被覆材と導体(ワイヤー)を交互に焼き切ってから、コネクタを接続する。
このような難易度の高い一連の製造工程を、自社開発の設備や治具を駆使することで、高品質かつ安定化させたことが、当社の最大の強みだ。完成したマイクロケーブルは、カテーテル用ケーブル、内視鏡用ケーブル、超音波診断装置用ケーブル等に使用されている。
また、当社では顧客の紹介や口コミ、展示会への出展から、受注につながることが多い。当社を訪ねてきた方から『こんな場所に、こんな技術を持つ会社があったのか』と驚かれることもあるという。当社が提供するケーブルは、顧客ごとにカスタマイズして納品するため、多岐にわたっている。例えば、耐屈強・耐油・耐溶剤性が求められる製造現場のFA設備、耐屈曲性能がポイントとなる二足歩行ロボット、使用環境が厳しい原子炉の内部を観察するためのカメラ、内視鏡内部の極細配線、生体センサーなど、要求性能が厳しいところにも使用されている。「数μV(マイクロボルト)のアナログ信号と、数GHz(ギガヘルツ)のデジタル信号を扱える電線会社は当社だけです。お客様が抱える問題を一緒になって解決することが私達の仕事であり、 “無理難題”の持ち込みは大歓迎です。逆に“無理難題”こそが、生き残りの唯一の道だと考えています」と藤原社長は、自社の技術力に自信をみせる。
次世代の商品の種が、力強く芽吹いていくことに期待
「伸光精線工業にかかわったすべての人が少しでも幸せになって欲しい」と藤原社長は経営哲学を語る。それは、顧客、仕入先、協力工場、金融機関はもちろん、従業員とその家族、地域社会までを含む、すべての関係者を幸せにすることで社会に貢献したいという意味。
このような想いから、当社では環境に配慮した経営を推進している。従業員の自主的な草の根運動で進めていきたいという観点から、エコステージの導入に取り組み、2006年にエコステージ1の認証を取得し、現在ではISO14001とほぼ同水準のエコステージ2を取得している。「当社では、ケーブルの端末へのコネクタの接続、ケーブルのコイル状の成形、仕上がったケーブルの検査等の工程で、女性のパート社員がたくさん働いています。エコステージの活動は、彼女達に『私が働いている会社は、ちゃんとしたことを、ちゃんとやっている』と共感してもらうことにつながっています。そしてそのことは、彼女達だけでなく、すべての社員のモチベーション向上にプラスに働いていると思います」と藤原社長は笑顔をみせる。
「小型・精密化が急速に進んでいる医療分野などで、次の商品の種をたくさん蒔いています。これらが早く芽吹いていくことを期待しています」「技術開発のテーマはたくさんありますので、既存の事業でキャッシュを稼ぎ、開発費を潤沢に使えるようにしていきたいと考えています」と藤原社長は、将来の事業展開を見据える。伸光精線工業の挑戦は、これからも続いていく。