SOLIZE Products 株式会社

エンジニアリング企業への脱皮を目指す老舗試作モデルメーカー

SOLIZE Products 代表写真
社長 後藤 文男
事業内容 試作モデル製作(光造形、粉末造形、注型、鋳造、樹脂・金属切削、板金など)
米国3Dシステムズ社製造形装置販売、ユーザーサポート業務
企業名 SOLIZE Products 株式会社
創業 1990年(平成2年)7月
所在地 (本社)東京都千代田区三番町6-3 三番町UFビル3F
(R1/高速試作センター1)川崎市高津区末長1-41-1
電話 044‐860-5019
代表 後藤 文男 (ゴトウ フミオ)
URL https://www.solize.com/

日本におけるラピッドプロトタイピング(積層造形法、RP)による試作モデル製作の草分けであるSOLIZE Products(株)(ソライズプロダクツ)。前身の(株)インクスの民事再生法の適用申請から4年を経て2013年4月に独立し、現社名に変更して再スタートを切った。光造形、粉末造形の試作設備は日本最大規模を誇り、顧客に適した材料を選択しながら最短2日の迅速な製品提供を可能にしているのが強みだ。すでに試作に加えて量産品に近い製品提供を視野に研究開発に着手しており、試作メーカーからエンジニアリング企業への脱皮を目指している。

国内最大規模のRP設備を保有

光造形や粉末造形といったRPは製品の3次元CADデータを使って樹脂や粉末、鋼鈑等などの材料を積層して試作品を作成する手法。モックアップによる試作モデルよりも短納期化が可能で、国内では3次元CADが普及し始めた1990年代後半から家電、自動車メーカーでの採用が始まり、製造業に浸透してきた。また、近年は3Dプリンターの登場で、一般の人たちにも簡易に造形品を生み出すことへの関心が高まっている。
SOLIZE Productsは、日本でいち早く光造形を取り入れ、日本のモノづくりの変革の一翼を担ってきた試作モデルメーカーである。川崎市と愛知県豊田市に高速試作センターを構え、光造形装置15台、粉末造形装置15台が稼働する。国内でこれだけの設備を持つ試作メーカーは他にはない。複数の仕事を短納期で、並行的にこなせる強みを活かし、顧客数は自動車関連を中心に建築、家電など二百数十社にも及ぶ。売上高の7割近くを占める自動車分野では従来のガソリン車、ディーゼル車に加えて、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車とエンジンの仕様が多様化し、試作ニーズは右肩上がりである。設備はほぼフル稼働で、売上高はインクス時代に記録した売上高30億円に並ぶ勢いを見せている。

3次元CAD普及が光造形による試作を拡大

同社の前身であるインクスが発足したのは1990年。創業者である山田愼次郎氏が三井金属時代に赴任した米デトロイトの展示会に出展していた米3DSystems社の光造形装置を見て、衝撃を受けたのがきっかけだった。非切削で立体造形物を製作できる光造形は日本ではまだ一般的には知られてなく、いずれRPが普及することを見込んで仲間6人で立ち上げた。
当初は国内メーカーの装置販売から入ったものの不備が多く、その分析に苦労したという。顧客の関心も薄いため創業からしばらくはCATIA(キャティア)など日本での導入が始まった3次元CADの操作や導入などのコンサルティングを主力事業としていた。現在、陣頭指揮を執る後藤文男社長が三井金属から移籍してきた93年はまだ創業当時の千葉県船橋市に本社を置いていたが、光造形やCADの仕事が増えて社員数も増えてきたため、データ変換などのソフト部門を置いていたかながわサイエンスパーク(KSP)への移転を検討し始めた。
川崎市に本社を移した94年には米3DSystems社の日本法人を引き受け、装置、材料の販売に本格的に乗り出した。3次元CADの普及とともに3次元データを活用したRPの需要も出始めてきた。最初は家電が主体でラジカセの筐体やトイレの蓋、コネクターなどの試作を手掛けていた。「ラジカセの外観が四角から丸みを帯びた曲線的なスタイルへと変わり始めた時期でそれまで切り貼りして作っていた試作ではリブなどに対応できなくなり、光造形の採用が始まった」(後藤社長)。光造形によって従来2~3週間かかっていた試作期間が1週間に短縮できるなどのメリットが明らかになり、市場は広がっていく。白物家電や複写機などOA機器のほか、医療分野で口腔外科の骨モデルの試作も当時は手掛けていた。
RP事業が本格化するのは90年後半からである。自動車メーカーへの3次元CAD普及が契機となり、徐々に受注が増えていった。KSPが手狭になり川崎市に高速試作センター1(R1)を設立したのをはじめ、06年には愛知県豊田市に試作センター2(R2)を開設し、2極体制を整えた
2003年以降は積極的な投資が始まり、社員も100人を超え始めた。04年には粉末造形設備を導入し、06年には光造形、粉末造形の設備は30台となり、試作部門として年間30億円規模にまで成長した。しかし、ここをピークに転落が始まった。リーマンショック後から自動車向け受注が激減し、インクスの成長をけん引していた金型部門やコンサルティング部門を直撃した。試作部門も一時は30%程度まで受注が落ち込んだという。金型部門を中心に機械設備の売却や社員の転籍など事業の再構築を試みたものの、受注環境が改善せずに自力再建を残念し、09年2月に民事再生法の適用を申請した
ここから再生への道は険しかった。ただ、試作部門は当初こそ一時帰休を実施するなどの措置はとったものの、民事再生法の適用が決まった数カ月後から受注が戻り始めた。「民事再生の申請当初こそ若干受注を控えるお客さんがいたが、事業継続がきまってから取引をやめた顧客は2~3社。自動車メーカーを始め有力な取引先はすべて残っていただけた」(後藤社長)。ほとんどの社員が残ったこともこの「顧客からの評価があった」と後藤社長は振り返る。毎月、受注が確実に戻り、仕事が忙しくなるにつれて社員全体に再生への確信が芽生えてきた。

「進化を感動に」。再スタートを機に新たな領域へ挑戦

インクスは12年に民事再生手続きを3年前倒しして終結させた。予想を上回るスピード再生は再建への明確な指針に加え、顧客の同社に対する期待も込められている。13年4月には心機一転し、SOLIZEに社名変更。本体は社内の事業育成を目的として金型部門やコンサルティングを残し、試作部門は100%子会社のSOLIZE Productsとして再編した。
SOLIZEグループの企業理念は“進化を感動に”である。「達成した喜びを分かち合いそれが進化へと続く力となる。その力が感動を伴う進化の原動力となって新たな価値を生み出す企業体になることを目指す」(後藤社長)ことを意味する。すでにSOLIZEProductsは11年から新たなエンジニアリング事業に向けて開発部門を発足し、現在3人が担当している。顧客の求める材料を使って試作だけでなく、量産に近い実用部品を製作することを視野に研究開発を続けている。「すぐに結果を出すことは考えていないが、徐々に顧客からの要望を受けられるようにしたい」と後藤社長は長期レンジでの育成を目指し、2020年には現状の30億円を50億円に引き上げ、装置販売では3Dプリンターの販売にも力を入れる考え。
また、当面は事業継続の側面から川崎市から豊田市への装置移設を進めて大震災発生時のリスク分散を図り、サプライチェーンを確保することを急ぐ。現在、豊田市の施設拡張に入っており、早い時期に両施設の設備を半々にする計画だ。後藤社長は再スタートを切るにあたって次世代を担う人材育成を課題に挙げる。「社外に人脈を築くために常に外を向いて活動できる人材がこれから必要。こうした次世代を担う若い人を育てていきたい」とさらなる飛躍に向けて新たな才能の発掘にも力を入れていく。

川崎市産業振興会館
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