株式会社 ユーディー

調湿性能が優れたメソボア珪藻土に光触媒の抗菌性を加えた夢の塗壁材

ユーディー 代表写真
社長 佐野 純哉
事業内容 珪藻土塗り壁材の製造・販売
企業名 株式会社 ユーディー 【㈱UD(Useful Diatomite)】
創業 2007年(平成19年)8月
所在地 川崎市高津区板戸3-2-1 KSP東棟211
電話 044-813-1112
代表 佐野 純哉 (サノ ジュンヤ)
URL http://www.useful-d.co.jp

建物の室内環境は「第三の皮膚」(1964豪州の作家フンデルトワッサー提唱)の考えに共鳴した佐野社長は、珪藻土のなかでも調湿機能に優れたメソポア珪藻土に自然素材を配合した塗り壁材を開発し普及に努めている。さらにKSP(神奈川サイエンスパーク)の支援を受け東京大学と㈱富士通の共同開発した「光触媒チタンアパタイト」を配合し、ウイルス・細菌を強力に吸着・死滅させる夢の塗り壁材を2013年秋に発表した。光触媒工業会のPIAJ(*)マーク入り試験証明書・成績書を申請中である。

(*)Photocatalysis Industry Association of Japan

福祉の世界から住環境の改善へ、“珪藻土”との出会い

1969年和歌山県生まれ横浜育ち、温かい家庭で育った佐野純哉氏の社会生活はまず福祉機器の普及から始まった。障害者向けの福祉機器を主体に全国の福祉施設や関連機関を回るうちに、その住環境に問題・課題が山積していることに気がついた。当時密閉性が高く安価で施工性の高い新建材を使用した住環境が、結露や揮発性化学物質(ホルムアルデヒトなど)によるシックハウス病等が問題視されていたが対策は充分とれているとはいえなかった。
建築資材の卸販売会社に移った佐野氏は、そこで“珪藻土”に出会い、自身が小学生時代にシックハウス病を経験したこともあって、珪藻土に注目した快適な住環境の提供努力に傾注していった。そして学習を続けるうちに、珪藻土と言っても千差万別であり、配合する原料も合成樹脂等を使い珪藻土の利点を殺しているような安価・粗悪品も存在することに気がつき、本物志向の「高機能珪藻土塗り壁材」の探求が始まった。2007年独立を果たし、KSPへ入居することにより製品“MP(mesopor)パウダー”の完成度を高め、さらなるステップへと飛躍中である。

自然素材だけを使った高機能・高品質の塗り壁材“MPパウダー”

珪藻土(ダイアトマイトDiatomite)は珪藻というプランクトンが大量に増殖・死滅・沈積し、有機物が分解されて残った二酸化ケイ素を主成分とする殻が、堆積し化石化した岩石である。世界中のあらゆるところから産出され、日本でも古くから石川県産珪藻土の七輪や秋田県産珪藻土の濾過材、また一般的な土壌改良材として各地で採掘されてきた。しかし珪藻土は素になる珪藻の種類(1.5万種以上)や地層によってさまざまな特性を持ち用途も異なっている。
珪藻土の粒径は約100μ~1mmでナノサイズの細孔(ポア)を持つ多孔質物体である。この「ポア」のサイズで大(マクロポア50ナノ以上)、中(メソポア2~50ナノ)、小(ミクロポア2ナノ以下)に分類され、調湿機能に優れているのはメソポアのみである。
珪藻土はすべて大・中・小ポアが混在しており、一般的には大(マクロポア)の含有率がかなり高いのが実状であるが、北海道の一部で採掘されるものはメソポアを突出して多く含有している。㈱ユーディーは北海道のこのメソポア珪藻土を主原料とし使用している。
佐野社長の開発方針は「健康で快適な住環境を継続して保つ」を目標に、①メソポア珪藻土、②100%自然素材(珪藻土、食品糊、白土、古紙)、③ゼロ・ウエイスト(*) であり、その結実として高い調湿機能(自律的に吸放湿する)を持った塗り壁材「MP(mesopor)パウダー」を送り出した。(*)製造・使用・破棄の過程でゴミを出さない。MPパウダーは土にかえる。

さらなる高機能を目指して光触媒を加味した“フラッシュクリーン”

KSPインキュベーションルームへ入居2年目に、KSPコーディネーターの取材を受けた。そこでの様々なアドバイスとともに「東京大学と㈱富士通研究所の共同開発による光触媒チタンアパタイト」の紹介を受けた。光触媒では“酸化チタン”が最も優れている材料として知られているが、吸着性には乏しく活性炭を混ぜたりして吸着層を作っていた。しかし沢山の菌や汚れを吸着してしまうと機能が低下して使えなくなるという課題があった。東京大学と富士通研究所では人間の歯や骨に含まれるカルシウムハイドロキシアパタイトのCa分子1つをチタン(Ti)分子に置き換える事で、吸着力を持った新しい光触媒チタンアパタイトを生み出した。
さっそく佐野社長は当社の誇るMPパウダーをベースに、光触媒チタンアパタイトの配合の研究に取り掛かった。様々な試行錯誤の後、2013年秋に新製品の発売に漕ぎつけ、富士通と光触媒チタンアパタイト使用に関するライセンス契約も結んだ。従来にないブレンド技術で接着剤等の化学樹脂を使用しないで固めることにより、アパタイトの機能を損なわないようした。
メソポア珪藻土の高い調湿効果に加え、ウイルス・細菌・VOC(揮発性有機化合物)・悪臭などを吸収分解する、暗所においても吸着機能で効果がある、という夢の塗り壁材の誕生である。

人と環境にやさしい商品の普及のため、今日を確実に生きる

「MPパウダーは主に一般住宅や集合住宅に、フラッシュクリーンは院内感染などの予防に病院や福祉施設へ、さらに公共施設・学校・ホテル・レストランなど不特定多数の人が集まる施設にも強力な安心安全を普及させたい」、「今は会社を大きくしようなどということよりも“地球環境と省エネを先導する技術開発を通して、人と環境にやさしい商品の普及に寄与すること”の理念を実行することに専念しています」と明確に言う。
珪藻土と初めて出会った建築資材の卸販売会社は、現夫人との出会いのきっかけでもあった。「2007年の素日“雷が落ちたような天啓”を感じ独立した時は妻に大変心配をかけてしまいましたが、最後には分かってくれ大変感謝しています」とのこと。現在3児に恵まれ、マラソンを趣味とする佐野社長は公私ともに充実した人生を歩んでいる。

川崎市産業振興会館
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