賞味期限は40秒! 開発に10年を費やした究極の焼き鳥「ごっそ玉」を提供する串焼酒場
社長 池田 健一
事業内容 | 串焼店舗運営、食材加工、コンサルタント事業 |
企業名 | 有限会社 鶏冠菜 |
創業 | 2000年(平成12年)4月 |
所在地 | 川崎市中原区小杉町1-529 扶志三ビル4F |
電話 | 044‐722‐6116 |
代表 | 池田 健一 (イケダ ケンイチ) |
URL | http://www.tosaka-na.co.jp |
「とさかーな」の名前を聞いて“ピン”とくる人は、かなりの通と言えるかも知れない。何しろここは、美味しい焼き鳥をお客様に提供するために、素材選びはもちろんのこと、“焼き方”にも“食べ方”にも徹底したこだわりを持つ焼鳥屋だからだ。自慢のメニューの一つ「ごっそ玉」の賞味期限はなんと40秒!食べる側にも心構えが必要だ。価値ある焼き鳥を追求する“通”に選ばれる店、それが「とさかーな」である。
とさかーなの「ごっそ玉」とは?
(有)鶏冠菜(とさかーな)は、串焼酒場「とさかーな」を運営するマネジメント会社である。新丸子に本店舗を置き、溝の口に支店を構えるほか、横浜、武蔵小杉、溝の口には、高級感が漂う少しリッチな焼鳥屋「Gosso」(ごっそ)ブランドのダイニングも運営している。
いずれの店舗も照度を落とした間接照明で統一され、テーブルやディスプレイがうっすらと浮かび上がるように配置された店内は、どこかエキゾチックな異次元の空間を思わせる。“扉を開ければ、幸せが広がる。運気が上がる『焼鳥屋』”のコンセプトもうなずける。
「ごっそ」とは、ご馳走を意味する宮崎県の方言である。看板メニューの「ごっそ玉」は、鳥の白レバーに豚の網脂をかぶせて焼いた、ご馳走の焼き鳥である。“焼き鳥は好きだけどレバーは苦手”という人にも食べてもらえるように、池田社長自ら10年以上の歳月をかけて開発した商品である。強火の直火で表面を焼いて旨みを中に閉じ込め、外はカリッ、中はフワッと驚くほどの美味しさを追求し、40秒以内にお客さんに食べてもらう。一刻を争うため、店員は全力疾走でテーブルまで運び、残り時間を表すストップウォッチとともにお客さんに提供する。
従業員は鶏冠菜の劇団員である
そんなユニークな店舗を運営する、鶏冠菜の池田社長に経営の考えを伺ってみた。
「うちは店舗で一切仕込みをしません。平間にあるセントラルキッチンで、全ての店舗の仕込みを行い、真空パックでその日のうちに各店舗へ配送しています。店舗では、食材を温めたり、焼き鳥に味付けたりするだけです。その理由は、アルバイトにはプロの料理ができないためです。それから、調理の職人も店舗には置きません。職人は頑固な人が多いので、お客様からの意見を、素直に聞き入れないこともあるためです。プロの職人には、セントラルキッチンで十分に実力を発揮してもらっています。味はしっかりと自分が評価して、言うべきことは厳しく職人に伝えています。本物のプロが仕込んだ料理を全店舗に配送するので、どの店舗でも本物の料理を安定して提供できるところが、うちの強みと言えます」
聞くところによると、池田社長は鶏冠菜の1号店(新丸子本店)を開く際、店舗の面積が13坪であるにもかかわらず、10坪のセントラルキッチンと、15坪の本部を構えたらしい。店舗の2倍近くの面積を費やしたことになる。会社設立と同時に、将来の店舗数の拡張を確信していたと池田社長は言う。さらに続ける。
「鶏冠菜の店舗は飲食店と考えていません。お客様が楽しみ憩うための“舞台”と考えています。社員やアルバイトも『とさかーな』と言う名の劇団に属する役者の一人です。役者として、主役であるお客様を脇役、裏方の立場で精一杯もてなすことを社員教育でしっかりと伝えています。これがそうです」そう言って池田社長は、1枚のパネルを見せてくれた。そこには次のように筆文字で力強いメッセージが書かれていた。
“私たちは、とさかーな劇団の役者として、お客様に楽しさあふれる憩いの場を提供し、感謝と喜びをいただくために働いています”
こだわりはほかにもある。焼鳥屋と言えばカウンター席を思い浮かべそうなものだが、どの店舗にもカウンター席を一切設けていない。“アルバイトにはプロの会話はできない”ということがその理由である。池田社長の考えでは、カウンター席とは、プロがお客様と接する神聖な舞台ということだろう。そこには徹底したプロ意識の追求がある。
「会社を設立した当初、周りからは鶏冠菜は必ず潰れると言われました。店舗よりも大きな本部やセントラルキッチンを設けたり、カウンターがない焼鳥屋を作ったりして、それまでの常識とあまりにもかけ離れていたので、続くはずがないと思われたようです。」しかし、そんな鶏冠菜は現在、川崎と横浜の国内5店舗のほか、シンガポールに新店舗を構えるほどに成長した。設立当初の池田社長の“確信”は的を射ていたのだ。
おもてなしの心をシンガポールから世界へ発信
シンガポールには現在、日本食関連のレストランが1,000店舗近くあり、空前の日本食ブームが沸き起こっている。現地のシンガポール人、そこで働く欧米人、そして在住の日本人に圧倒的に評価されているのが「日本式の居酒屋スタイル」である。
昨年10月、鶏冠菜は“シンガポールに本物の焼き鳥を”をコンセプトにした、「おもてなしダイニングごっそ」を開店した。ロケーションはマーライオンで知られるマリーナベイサンズから徒歩10分の好立地である。オープンから半年にもかかわらず、既にシンガポールナンバーワンの本格焼鳥屋との呼び声が高い。シンガポール在住の飲食店店長が通う居酒屋5選にも「ごっそ」は選出されている。人気の背景を池田社長に訪ねてみた。
「日本の“おもてなし”の心は世界に誇れる文化です。ほかの国では考えられない文化のようですが、海外で日本のおもてなしを表現すると、みんなが素晴らしいと言ってくれます。ごっそは、食材や調理方法、店づくりの全てに最高のこだわりがあります。しかし、おもてなしの心が最も高く評価されたのだと思います。」
池田社長は現在、一か月のうち3週間をシンガポールで過ごす多忙な日々を送っている。それは、近いうちにシンガポールに直営店を5店舗増やし、さらに、鶏冠菜の調理と、おもてなしの心を伝える学校「OMOTENASHI」を設立するためである。
「おもてなしとは“表無し”、つまり“裏”という言葉に通じます。舞台でも表の裏には9割の努力と準備があり、裏にこそ本質が隠れていると言えます。我々は裏方に徹してお客様に最高の表舞台を提供する。そうするとお客様は幸せを感じて優しくなれる。その気持ちを持ち帰っていただくと、ご家族も幸せになれる。おもてなしの心が幸せを連鎖させるのですね。だから、鶏冠菜の店舗と学校を世界に広げて、おもてなしの心を伝えたいと考えています。ひいては世界平和に貢献すること、それが鶏冠菜の願いです。」
池田社長は、串焼酒場の運営を通じておもてなしの文化を世界に広げ、平和な社会の実現を目指している。それは決して夢ではなく、恐らく今回も実現を確信しているに違いない。