宮松エスオーシー 株式会社

余剰生コンの再生利用にチャレンジ! 中長期的な視点で堅実経営

宮松エスオーシー 代表写真
社長 村松 直人
事業内容 生コンクリート製造販売、骨材一式販売
企業名 宮松エスオーシー 株式会社
創業 1954年(昭和29年)11月
所在地 川崎市高津区久本3‐5‐7 新溝ノ口ビル3F
電話 044‐812‐1477
代表 村松 直人 (ムラマツ ナオヒト)
URL http://www.miyamatsu-soc.co.jp

宮松エスオーシーは、建設工事現場で使用される生コンクリートの生産・供給を行っている。建設会社の様々な工事用途に応じて、高強度コンクリートを始めとした多種多様なコンクリートを、工事の進捗に合わせてタイムリーかつ高い品質で建設現場に安定供給できるのが当社の強みだ。原料の調達から、技術開発、柔軟な生産と供給能力の確保、製品輸送まで、一貫して効率良く行うために、当社を中心に関連企業が協力して、生コン事業の運営体制を整えている。浮き沈みの激しい建設業界にあって、中長期的な視点から堅実なグループ経営を続ける元気企業を紹介しよう。

JIS認定の取得など、その時々の時代の要請に応えて成長

1954年の創業から60年、宮松エスオーシーは社会インフラの整備や高層ビル・マンションの建設現場に欠かせない生コンクリートの供給を担っている。
当社は村松直人氏の父親が建材業を営む会社として設立し、国内の建設需要が右肩上がりを続ける中、1968年に生コンクリートの生産に乗り出した。1982年にJISの認定工場となったことで、生コンの受注量が増えて順調に売上を伸ばしていった。生コン車を小型車から大型車に切り替え始めたのはこの頃からだという。
しかし、セメントの国内需要は1990年をピークに、バブル崩壊後は急激に落ち込み、当社も大きな影響を受けることになる。特に、原料の仕入れ先である大手セメント会社の合併が相次ぎ、生コン業界では、そのあおりを受けて廃業に追い込まれる同業者も多かった。そのような中でも、当社は過大な投資を控え、コスト管理を徹底するなど、堅実な経営を続けることで生き残りを図ってきた。また、同業者から事業を譲り受けることで、工場の生産体制を整え、お客様である建設会社の多様なニーズに対応している。現在では、子会社も含め、川崎市中原区の川崎工場と大田区城南島のりんかい工場および城南工場の3つの生コン工場、千葉県袖ヶ浦市に生コンのリサイクル工場、合計4つの工場で事業を運営している。
一方、村松氏は1973年に当社へ入社。運転手、配車、製造、営業、クレーム処理など、生コン事業に必要な業務を一通り経験し、工場長などを経て、28歳で社長に就任した。「バブル前の仕事が忙しかった時期には、夜遅くまで工場を稼働させざるを得ず、周辺の住民から騒音等に対する苦情が寄せられ、お詫びに駆け回っていました」と当時の苦労を振り返る。現在、すべての関連工場は、周辺環境に配慮しつつ、公害対策は万全な体制で操業している。

業界に先駆けて、ゼロ・エミッションの達成に挑戦!

生コンクリートは用途に応じて、水・セメント・細骨材(砂)・粗骨材(砂利や砕石)・混和材の配合割合が異なり、納入先ごとにミキサー等の生産設備を洗浄してから、新たに配合した材料を投入する必要がある。製造された生コンは生コン車で攪拌しながら工事現場まで運搬されるが、打設に適した状態を保つため、およそ90分以内に到着させなくてはならない。そして生コン会社は、打設後に硬化したコンクリートの強度に責任を持たなくてはならない。宮松エスオーシーは納入先別の生コンの品質管理や生コン車の納品時間の管理を強化することで、お客様の信頼を勝ち取っている。
また、当社は一般的に用いられる普通コンクリートだけでなく、高強度コンクリート・透水コンクリート・流動化コンクリート・ファイバーコンクリートおよび再生骨材コンクリート等の特殊なコンクリートにも幅広く対応しており、建設会社の様々な要求に応えている。例えば、高層ビル向けの超高強度コンクリート(設計基準強度:150N/mm2)を建設会社と共同開発し、大臣認定を取得した製品を納入している。
現在、当社が最も力を入れているのは、事業を通じて発生する廃棄物をゼロにする『ゼロ・エミッション』の達成にチャレンジすること。国のものづくり補助金を受けて、余剰生コンの処理方法の実証研究に取り組み中であり、実用化に向けた技術開発を加速させている。
従来から、建設会社は余裕をみて生コンを手配するため、出荷量の3~5%程度の余剰生コンが発生し、産業廃棄物として膨大な量が処分されている。当社が所属する生コン組合から建設会社へ、過度に余裕をみずに適切な量を手配してもらえるよう働きかけてはいるが、なかなか改善されないのが現状だ。そこで当社では、この余剰生コンの有効活用に着目し、再生利用のための研究を行っている。
具体的には、工場の生産設備に残った生コンや、使用せずに戻ってきた生コン車の生コンを、水を使わないで、固まる前に砂利や砕石を分離するのが特徴だ。余剰生コンのうち、質量比で7~8割程度を占める骨材を再生利用できるという。従来のコンクリート廃材を粉砕してリサイクルする方式と異なり、木くずや金属片等の不純物が入っていないため、バージン材(新品)と同等の品質で生コンの原材料に戻すことが可能になる。
「事業化のための技術的な課題はクリアできると思いますが、建設会社や施主の間では、再生コンクリートに対する理解が不足しているのか、漠然とした不安を持っているというのが現状です。環境問題にもう少し目を向けていただき、地球にやさしい再生コンクリートの品質を積極的にPRすることで、ご理解を得ていきたいと考えています」と村松社長は業界を挙げた啓蒙活動の必要性を強調する。

再生コンクリートを普及させることで、社会に貢献

宮松エスオーシーの組織運営の基本は、社員にできるだけ仕事を任せ、社長は細かなことに口出ししないこと。任せることで責任をもって仕事に取り組んでもらい、社員の成長を促すようにしている。また、働きぶりによっては昇格もあるが、降格もある。年功よりも成果主義で人事評価を行っているという。
一方、社員のモチベーションを高めるため、宮松グループの全社員が参加して行う社内イベントにも気を配っている。毎年の新年会では、社員の家族も呼んで、会社に貢献した社員の表彰式を行っている。また、昨年の夏には納涼大会として、船でランチクルーズを行い社員間の親睦を図っている。そんな当社では、毎年秋に工場近くの城南島海浜公園で行われている砂浜を清掃するイベントに、社員が自主的にボランティアとして参加している。社員の自然環境や社会貢献への意識の高さの一端がうかがえる。
「2020年に東京オリンピックが開催されることが決まり、そこに向けて建設需要が盛り上がることが期待されていますが、その先を考えると安易な設備投資はできません。世の中の動向に大きく左右されない、安定した事業基盤を創っていきたいと考えています」と村松社長は笑顔をみせる。「行政、生コン組合、同業者、お客様等を巻き込みながら、再生コンクリートの市場を広げていかなくてはなりません。再生コンクリートの普及に一役買うことで、循環型社会の構築に貢献していきます」宮松エスオーシーの挑戦は、これからが正念場だ。

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