行列のできるラーメン屋さんを高品質な中華麺で支え続けるラーメン店専門の製麺所
代表取締役社長
津田 優人
事業内容 | 生卵入高級麺、国産内麦塩麺、中華麺、ワンタン・ギョーザの皮等の製造卸売業、新規開店プロデュース業 |
企業名 | 株式会社 製麺の匠 大黒屋 |
創業 | 1960年(昭和35年)9月 |
所在地 | 川崎市川崎区高津区久地2-16-12 |
電話 | 044‐814-5787 |
代表 | 津田 優人 氏(つだ ゆうと) |
URL | http://www.daikokuya.net/ |
「当社の“卵麺”は新鮮な生卵をふんだんに使用した高品質の中華麺です。一般的に使われる全卵粉や加工液卵の中華麺と比べて衛生的に取扱いが大変な生卵を使用する理由は、生卵にしか出せない独特の風味とツルツル・シコシコの食感が生まれ、卵白を麺にコーティングすることにより熱が伝わりにくくなるので麺の茹で伸びが少ないというメリットが生じるからです」と津田社長は胸を張る。
当社は、生卵入高級麺、国産内麦塩麺、中華麺、ワンタン・ギョーザの皮等の製造卸売業及び新規開店プロデュース業を展開する。また、新商品“冷温麺”の商品化も決定した。
日本一旨い麺“卵麺” 当社独自の真空製法“真空練り”で実現する
「主力商品の“卵麺”は当社独自の真空製法である“真空練り”で製造しています。小麦粉ひと粒ひと粒に水を浸透させ、グルテンを発生させることでコシが出ます。真空練りの大型ミキサーを機械メーカーに特別発注して製造したので、当社のアイデアとノウハウが詰まっています」と津田社長は語る。
成功した理由は、テレビ番組「どっちの料理ショー」で当社商品の“卵麺”を使ったラーメンが5回連続で勝利したことにある。「どっちの料理ショー」へ出演したことも“卵麺”の知名度を押し上げた。また、津田会長は元従業員が独立開業したラーメン店のプロデュースを手掛けて、4店舗を展開するラーメン店に育て上げた。
「通常の中華麺は5分で伸びるが、当社の“卵麺”は5分経過しても茹で伸びが生じないので、出前に向いています。また、最近増えているラーメン博などのラーメンフェスではお客様が行列を作り、ラーメンを購入してから口にするまで時間がかかる場合にも効果を発揮します」と語る津田社長は市場ニーズを分析する。
当社では“卵麺”の他に、100%国産小麦を使用した中華麺“国産内麦麺””も販売する。国産小麦はモチモチとしたうどんのような食感で、つけ麺や太麺によく使用される。一方、“卵麺”はツルツル・シコシコとした食感で、パスタのアルデンテのようなコシの強い麺だ。お客様が何を望んでいるのかを把握することに努め、それに合わせて麺を作っている。
美容・健康ブームを意識した新商品“冷温麺”の販売開始
津田社長は2014年3月に入社し、三代目の代表取締役に就任した。津田社長は大学卒業後、大手芸能プロダクションの㈱田辺エージェンシーでアシスタントプロデューサーとして、テレビ番組やコンサートの裏方を担当した。その後、ドラムを演奏するミュージシャンとしてレコーディングに参加しながらプロ野球の球団ソングやパラリンピックの応援ソングの作曲を手掛けた。
「ミュージシャンも製麺屋もどこかで繋がる可能性があるので、人間関係を大切にしています。ラーメン屋は夢がある職業で、多くの芸能人も副業でラーメン店を経営しています。自分が今までやってきたことはムダではなく、しっかり役に立っています」と津田社長は語る。
現在の取引先は東京の行列のできるラーメン屋などラーメン店や中華料理店が多い。遠い場所では鳥取県・山形県・香川県にも配送しており、ホームページを見たお客様からの問い合わせにより取引が開始したケースもある。
昨年、津田社長自ら開発した商品が“冷温麺”だ。通常の冷麺はデンプン主体で温かいスープをかけると柔らかくなるが、デンプンと小麦粉などの配合を試行錯誤した結果、温かいスープでも茹で伸びしにくく柔らかくならない“冷温麺”の開発に成功した。美容・健康ブームを意識してコラーゲンも配合した。ラーメン店や中華料理店など従来の取引先とは異なる焼肉屋や韓国料理店に提案して、“卵麺”に続くブランド力の高い製品に育てる計画だ。
当社は、津田社長の祖父が目黒区で製麺屋を創業して以来、中華麺を中心に製麺所を営んできた。川崎に立地した理由は、元々目黒区の住宅街で製麺工場を朝3時から操業していたことから、近隣住民に配慮して、川崎市高津区久地の現在地に2011年3月に移転した。売上に占める割合は、“卵麺”と“国産内麦塩麺”が多く、その次に中華麺やワンタン・餃子・シュウマイの皮が続く皮類は手作業だ。
職人技の機械化とマニュアルの整備により町工場から食品工場へ変革
「目黒区に所在していた時は町工場でした。昔は職人技に頼っていて、職人が休むと困る状況でした。そこで、まずは町工場から食品工場に変えようと決意しました。機械の使い方が一定であれば品質も安定するので、職人技を機械化してマニュアルも作り込みました。職人の場合は品質が完璧かそれ以外と落差があり、廃棄品も多かったのです。しかし、機械化とマニュアル化により安定した品質の製品を供給できるように体制を整えました」と津田社長は語る。
当社では従業員のケガには細心の注意を払っている。耳にタコができるくらいに機械に触る際には必ず電源を落とすように徹底している。また、「仕事は楽しい」と従業員に思って欲しいとの思いから人間関係を良好にする為に、コミュニケーションを大切にする。津田社長も従業員に任せっきりにしないで、毎日工場に入って従業員に積極的に声をかけている。「従業員から学ぶことも多い」と様々な要望に耳を傾ける。
「今後はジャンルを飛び越えてパスタと中華麺のコラボなどイタリアンとの融合にも取り組み、中華麺を進化させていきます。また、自分のラーメン店を持つことと海外進出を夢見ています。自分のラーメン店を持つ夢の実現にはまだ時間が必要ですが、海外進出は今年から香港に麺を輸出することが決定しました。将来はアメリカやヨーロッパにも当社の中華麺を輸出する計画です」と津田社長はビジョンを語る。
ミュージシャン時代にアルバイトでパソコンを使う仕事もしていた津田社長は、入社してすぐにホームページをリニューアルし、検索キーワードを工夫するSEO(検索エンジン最適化)対策を図った。その結果、問い合わせが大幅に増加して、売上も増加した。現在も検索キーワードに常に気を配りながら、ホームページ、ブログ、フェイスブックを頻繁に更新する。
「当社の中華麺は厳選した素材を使っているので、麺にこだわりとプライドを持っているお客様に使って欲しいと考えています。中華麺は全自動で製造していますが、最終工程では色検査や異物混入を目視で確認しています。安全と衛生を第一に経営しています。当面の経営課題は茹で伸びしない“卵麺”のラーメンフェスでの採用を増やすと共に、新商品の“冷温麺”も世の中に広めていきたいと考えています」と語る津田社長は夢の実現に向けて邁進する。