有限会社 イルフェジュール

特許製法のチョコレート菓子“蒸ショコラ” バレンタインデーに行列のできる人気商品

イルフェジュール 代表写真
代表取締役 宍戸 哉夫
事業内容 焼菓子、洋菓子、チョコレート、アイスクリームなど製造・販売
企業名 有限会社 イルフェジュール
創業 2004年(平成16年)10月
所在地 川崎市麻生区下麻生2‐5‐201
電話 044‐987‐3120
従業員 45名
代表 宍戸 哉夫(シシド チカオ)
URL http://www.ilfaitjour.com/

「特許製品“蒸ショコラ”はチョコレートを食べているような感覚の一口サイズの焼菓子で、バレンタインデーの時期には行列のできる人気商品です」と宍戸社長は胸を張る。
伝統的なフランス菓子をもとに独自にアレンジした製法により、フルーツタルト“タルトフリュイ”などの生菓子、“蒸ショコラ”などの焼菓子、生チョコレート、アイスクリームなど魅力的かつ個性的な洋菓子を生み出し続けている。使用する素材を厳選しており、小麦、バター、塩、牛乳、カカオ、チョコレート、ナッツ類、砂糖、果実などの原産地を店内の掲示板で紹介している。

都内有名洋菓子店での修行時代にジャパンケーキショー銀賞など数々の賞に輝く

宍戸社長は、平成16年に麻生区下麻生でオーナーシェフとしてイルフェジュールを開業した。「東京白金の有名洋菓子店でシェフまで経験したので開業を決意しました。父が開業したフレール洋菓子店の土地を使った方が有利との父からのアドバイスもあり、売りに出されていた隣と裏の土地を購入して、店舗を建て替えて商売を開始しました。」と語る。
イルフェジュールとは、フランス語で「朝日」または「夜明け」を意味する。新しい感性で新しい洋菓子を生み出していきたいという思いが込められている。平成25年に道路拡張工事に伴い開業の地にほど近い現在地に移転した。
宍戸社長は、小学生の頃、クリスマス時期には菓子の箱折りの仕事で小遣いを稼いだり、見よう見まねでケーキを作ったりしていた。父親である宍戸会長から「継がなくてもいいから好きなことを自由にやっていい」と言われて、高校・大学とラグビーに打ち込み、大学卒業後はスポーツジムのインストラクターかスイミングスクールのコーチになろうと考えていた。しかし、バブル崩壊後でリストラの嵐だったスポーツ業界に魅力を感じず、実家の洋菓子店を継ぐことを決意した。宍戸会長の「洋菓子の専門学校に行く必要はない」との意見を聞き、フランス菓子「銀座レカン」に大卒で就職した。
「レカンでは製造部門で働くことを希望したものの、会社の方針で入社から2年間は完全に下働きでした。デパート売り場、喫茶やフレンチレストランのウェーターなどリボンの結び方から接客サービスまでパティシエの修行だけでは経験できない販売部門での仕事は勉強になりました。その後に大卒では異例の製造部門に配属されました。」と宍戸社長は語る。
自分の店を持った時に店内に飾れるコンテスト受賞の表彰状が欲しかった宍戸社長は、平成10年に当時カリスマ・パティシエの桜井修一氏がシェフを務める東京代官山「パティスリーマディ」に転職した。始発から終電まで働きながらもコンテスト受賞のための作品作りに没頭した。その結果、平成12年のジャパンケーキショー銀賞など数々の国内外のコンテストで受賞した。その後、平成13年に東京白金の有名洋菓子店にてシェフに就任した。

作りたいケーキを作っても売れなければ経営が成り立たないことを痛感する

「修行時代には、生菓子、焼菓子の技術だけでなく、チョコレート、飴細工の技術も身に着けたことが強みです。自分の店を持ってから作りたいケーキを作っても売れなければお金にならないことを経営者として痛感しました。売れるケーキも作らなければならなくなり、当初作っていなかったショートケーキをお客様の声を聞いて作り始めました。夏場には美味しいイチゴが無かったので探しました。夏場でも美味しい長野県産のイチゴ“サマープリンセス”を取り寄せています。」と語る宍戸社長は、素材の品質にも徹底的にこだわる。
当初はフランスのパティスリーを意識した店づくりを目指した。パティスリーとはメインディッシュ以外の前菜やデザートをパーティーにケータリングする業態だ。そのため、当初はケーキ以外にパンやビールのおつまみとなるタルトも販売していたが、お客様のニーズとのギャップがあり、現在は販売していない。
成功した理由は“蒸ショコラ”がヒット商品になったからだ。“蒸ショコラ”は月2万個売れておりバレンタインデーの2月には14万個を超える販売量を誇る。開業時に主力商品として販売した5号サイズ(15cm)のチーズとチョコレートのホールケーキは期待通りに売れなかった。そんな折、スイーツの通販サイト運営会社の担当者が当店のチョコレートのホールケーキ“こんがりショコラ”を食べて美味しいとほめてくれた。但し、スイーツ通販サイトで販売する際に「一口サイズに出来ないか」と提案があった。
そこから苦労が始まった。“こんがりショコラ”を一口サイズにすると、焼いた時に破裂して商品にならなかった。試行錯誤の結果、チョコレートと卵白を乳化する技術にたどり着き、平成25年に特許「チョコレート菓子の製造方法」を登録した。その頃、伊勢丹相模原店の「お取り寄せスイーツ」の催事コーナーで販売したところ1日300個売れるヒット商品となった。
当店の人気商品の美味しいタルトを30~40代の女性向けに販売して欲しいとの依頼を受け、平成19年にエキュート立川に出店した。
タルト以外の焼菓子でも柱となる商品が欲しかった宍戸社長は、バレンタインデーの2週間前から自ら店頭で“蒸ショコラ”を毎日無料で配布した。その結果、ファンとなったお客様の口コミでバレンタインデーには行列ができた。
その後、平成24年に新百合ヶ丘エルミロード店、平成27年にラゾーナ川崎店を出店した。

長く働くことができる夢のある職場に変えるために働き方改革を推進する

「現在は“蒸ショコラ”の小売店向け販路開拓に注力しています。また、当社では働き方改革に取り組んでいます。ケーキ店は朝早くから夜遅くまで働くなど一般的に労働環境が良くない業界です。そこで、残業が無く、長く働くことができる夢のある職場に変えることを目標にしています。具体的には、パート・アルバイトの正社員化、職種ごとの教育訓練などやりがいのある職場になるようなシステム作りに取り組んでいます」と宍戸社長は熱く語る。
将来的には、働き方改革を進めて給料も商社並みにすることを目指している。
当店のこだわりは「美味しい素材を、美味しい製法で、美味しく食していただく」ことで、宍戸社長のイメージに合う新しい感覚の新商品を今後も提供していく予定だ。宍戸会長の時代に人気商品だった“チーズスフレ”を進化させた新商品も検討している。そして、宍戸社長は「食べ物で恩返しがしたい」と考えており、喫茶店「サロン・ド・テ」を本店に併設し、洋菓子などのデザートをワゴンで提供する「ワゴン・デセール」や「軽食」も提供する計画だ。
「川崎市を代表するようパティスリーにしていきたいです」と宍戸社長の夢は広がる。

イルフェジュール 蒸しショコラ写真

※ 参考:“蒸ショコラ”(特許 第5348788号)

川崎市産業振興会館
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