株式会社 トーシンウイング

もやし用包材でシェアナンバーワン!デザインから製造まで社内一貫体制で提供

トーシンウィング 代表写真
代表取締役 大森 義雄
事業内容 食品用包材の製造・販売、作業効率化コンサルティング
企業名 株式会社 トーシンウイング
創業 1971年(昭和46年)2月
所在地 川崎市多摩区寺尾台1‐24‐8
電話 044‐944‐5821
従業員 77名
代表 大森 義雄(オオモリ ヨシオ)
URL http://tsw.fdblog.jp/

スーパーで毎日のように手に取る野菜、特に葉物の野菜は包材に入った状態で店頭に並んでいる。野菜の種類や生産者によって包材の材質や印刷内容が異なるが、普段は気にとめない方も多いだろう。近年、消費者の食に対する安全性の要求が高まり、生鮮食材である野菜をスピーディにかつ安全な形で消費者に届ける役割を、当社が扱う包材も担っているのだ。北海道から関東にかけて1,300社もの顧客を持ち、茨城県にある2ヶ所の生産工場から、オーダーメイドできる包材を業界トップクラスの短納期で納品できる当社の強みと将来のビジョンについて大森社長に話を聞いた。

強みは、包材をデザインから製袋までオーダーメイドで、かつ短期間で納品できる社内一貫体制と、提案力と機動力の高い営業部門の存在

当社の強みを大森社長に伺うと、「中間層の顧客をターゲットにしている」という答えだった。大手だと大量供給ができる一方で規格品提供が主体になってしまい、青果生産者の細かいニーズに対応できず、小規模だと生産量に限界があったりデザイン力が弱かったり
と、それぞれに一長一短があるようである。当社は、客数では多数を占める平均的・中間的な出荷量の顧客ニーズに応えるため、包材のデザインからスリット・製袋まで社内一貫体制を敷き、オーダーメイド品主体の受注活動をしている。
当社の商談プロセスは、10名いる営業マンがJAや農家から野菜の種類や包材の大きさの要望を聞くことから始まる。営業マンは一人一台の車を受け持って顧客を巡回し、納品と同時に顧客の在庫状況を把握し、即時オーダーに対応する機動力を持っている。また、野菜の種類によってPP(ポリプロピレン)や耐寒性の高いOPP(二軸延伸ポリプロピレン)、あるいは生分解性材料などを提案するコンサルタント力も兼ね備えている。包材は規格品だと野菜を入れた際に種類や個体によって無駄な部分が生じるので個別にデザインした方が顧客にとって都合がいい。
それに加えて、包材の表面には商品名をわかりやすく印刷表示することが求められるため、結果的に95%は非規格品、すなわちオーダーメイドになる。営業マンと生産ラインの間を繋ぐのが、つくば工場にあるデザイン企画部門の4名のデザイナーである。ここでデザインした原案を営業マンから顧客にフィードバックし、承認を得た上で受注する。受注から納品まで、オーダーメイド品は2週間くらい、既に版がある既存品で3~4日である。大森社長は「業界ではかなり早い方だ。大手では絶対できない。」と静かに語るが、オーダーメイドにも関わらず、短納期で納品ができることも大きな強みであり、多くの顧客がリピートする要因である。
このような強みを活かして営業努力を重ねた結果、当社はもやしの袋では全国で約3分の1のシェアを誇っているトップメーカーとなった。川崎市の生産者との関わりでも、菅地区の「のらぼう菜」や「多摩川梨」の包材を扱ったことがあるそうである。
また、当社の包材は野菜用だけではなく、聖マリアンナ医科大系列病院で使用する薬用の袋やレントゲンフィルム用の袋にも使われている。

かつては工作機械の企業のエンジニアであったが、若い夫婦二人で創業してから現在は川崎の本社と茨城県に2つの工場を持ち、従業員77名の企業にまで成長

大森社長は1946年(昭和21年)生まれで、東京都内の工作機械の企業にエンジニアとして働いていた。主に機械部品の図面を書いていたそうであるが、6年ほど勤めた後に独立して食品包材の会社「東神資材」を1971年(昭和46年)に24歳の若さで立ち上げた。既に結婚していたが、安定的なサラリーマン生活から一転、若い夫婦2人で創業したのだから驚きである。社名は東京の「東」と神奈川の「神」から取ったという。
当初、会社は稲田堤にあって社長が営業、奥様が事務を担当し、包材の製造は外注で対応していたそうである。その後、「(社員は)飛んで歩きなさい」という意味を込めて「ウイング」を付け足し、現在の株式会社トーシンウイングという社名にした。大森社長は「地道にやってきた」と控えめに語るが、ビジネスが大きくなるにつれ、顧客が茨城県内に多かったこともあり、平成6年に茨城県石岡市につくば工場を建設し、その後平成24年に同じく石岡市に茨城工場を建設した。
つくば工場は製袋工程、デザイン企画、営業部門があり、茨城工場は印刷、スリッタ工程(※)を担当しており、現在では川崎市多摩区にある本社と合わせて総勢77名の企業に成長した。
そんな大森社長の趣味はゴルフである。ご子息が就職してからは、会員権を持っている茨城県のホームコースで年間100ラウンドをこなしていた。「最近は減らしている」と言うが、それでも50ラウンドをやっているそうである。実は病院関係の包材ビジネスはゴルフ人脈も一役買っているという。
※スリッタ工程:フィルムやプラスチック、金属箔などのシートを規定の幅でカットし、ロール状に巻取る作業

将来ビジョンは、衛生管理体制の構築・茨城工場敷地に新工場建設・新製品開発

将来ビジョンとして、一つ目は衛生管理体制を構築することである。近年、様々な食品関係の事件が報道され、一般消費者の食に対する安心・安全の意識が高まってきており、食材そのものだけでなく、食材に直接触れている包材についても同様の安全性が求められている。当社の生産工場でも衛生面での配慮は欠かさない。作業者が現場から一旦離れて戻る際には手洗いと消毒を行わないとエアシャワーのドアが開かない仕組みをとっている。顧客であるJAや企業も工場見学に来ることが多くなっているので、更なる衛生環境の向上に取り組んでいく。
二つ目は、茨城工場に約20億円を投資して2,600坪の新しい建家を建設することである。 設備はつくば工場から移設する計画であるが、生産効率・スペース効率を上げて、現在の月産250トンを40~50%増やしたいと考えている。
三つ目は、レトルト食品や冷凍食品といった新たな分野の開拓である。当社で保有する知的財産権(3件)のうちの1つに、カット野菜の取り出しが容易で、自立して皿代わりにもなる袋を提供する技術がある。実用化して、例えば温野菜用やサラダ用に商品化したいと考えている。
四つ目は、少子高齢化の世の中となり、人手不足や長期雇用への課題に向き合っていくことである。出産後でも働きたいという女性社員の要望に対しては託児所などの福利厚生面を充実し、正社員やパートに限らず長く勤めてくれた従業員には永年勤続表彰なども行って、従業員の定着率を高めていきたいと考えている。
最後に、多くの中小企業の悩みである「後継者問題」について尋ねてみたところ、ご子息二人は共に当社に勤務しており、長男が工場担当、次男が営業担当ということで、大森社長のビジョンが実現するのはそう遠くないのではなかろうか。近くのスーパーで包材に入った野菜を手にすることがあったら、それは元気企業「トーシンウイング」製かもしれない。

川崎市産業振興会館
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